「eMAXIS Slim」シリーズが運用報告書を公開しました。
まずはスリム先進国株の運用報告書を確認してみます。
●スリム先進国株
期間 2024.4.26~2025.4.25
信託報酬を含むコスト 0.124%
信託報酬を除くコスト 0.025%【内訳】
売買委託手数料 0.001%
有価証券取引税 0.012%
その他費用 0.012%
スリム先進国株の信託報酬は税込0.09899%であり、たわら先進国株、ニッセイ外国株と同率です(たわら先進国株が2023年4月7日付けで最安値を単独更新したところ、スリム先進国株が5月11日付け、ニッセイ外国株が6月14日付けでそれぞれ対抗値下げを実施しましたので、直近2年間の信託報酬は3ファンド全て同率です)。
そこで、たわら先進国株、ニッセイ外国株と比較してみます。
※計算期間が3ファンド全て違うため、同じ条件での比較ではありません。
●たわら先進国株
期間 2023.10.13~2024.10.15
信託報酬を含むコスト 0.129%
信託報酬を除くコスト 0.029%【内訳】
売買委託手数料 0.001%
有価証券取引税 0.009%
その他費用 0.019%
(保管費用 0.015%)
(監査費用 0.001%)
(その他 0.003%)
●ニッセイ外国株
期間 2023.11.21~2024.11.20
信託報酬を含むコスト 0.117%
信託報酬を除くコスト 0.018%
【内訳】
売買委託手数料 0.001%
有価証券取引税 0.003%
その他費用 0.014%
(保管費用 0.013%)
(監査費用 0.001%)
(その他 0.000%)
信託報酬を除くコストを比較すると、
スリム先進国株 0.025%
たわら先進国株 0.029%
ニッセイ外国株 0.018%
であり、ニッセイ外国株が最も低コストです。
ただ、ニッセイ外国株が安いのは有価証券取引税が影響しているため、信託報酬・有価証券取引税を除くコストを比較してみます。
スリム先進国株 0.013%
たわら先進国株 0.020%
ニッセイ外国株 0.015%
売買委託手数料、監査費用は3ファンド全く同率のため、更にこれらを除外し、「保管費用+その他」を比較してみます。
スリム先進国株 0.011%(保管費用0.010、その他0.001)
たわら先進国株 0.018%(保管費用0.015、その他0.003)
ニッセイ外国株 0.013%(保管費用0.013、その他0.000)
※「その他」は「信託事務の処理に要する諸費用」のことであり、要するに信託銀行に支払った手間賃のことです。
上記3ファンドはマザーファンドを買うだけファンドであり、現物株を保有しているのはマザーファンドになりますが、現物株はマザーファンドが保管しているのではなく信託銀行が保管しています。マザーファンドが現物株を売買するときは信託銀行に指示して行うところ、この事務作業量に応じた手間賃を信託銀行から請求されます。この手間賃が「信託事務の処理に要する費用」です。
そのため、マザーファンドが保有する現物株の売買の回数が多ければ多いほど、信託銀行からより多くの手間賃を請求されることになります。
また、マザーファンドが保有する現物株を売却すると含み益が確定するため、現物株の所属国に譲渡所得税を支払う必要もあり、それが無駄なコストになります。
このように、ファンドが保有する現物株の売買の回数が多ければ多いほど、信託事務の処理に要する費用と有価証券取引税もまた多くなることになります。
ここまで分解してみると、
・たわら先進国株のコスト高の原因は、保管費用がかかったから
・ニッセイ外国株のコスト安の原因は、有価証券取引税と信託銀行への手間賃がかからなかったから(=資金流出の影響か?)
・スリム先進国株には、特に問題点はなし
ということが分かります。
もっとも、たわら先進国株の保管費用(0.015%)が本当に高いのか(=運用会社の運用能力が低いのか)というと、そうではありません。
マザーファンドの保管費用とマザーファンドの占有率を見てみます。
マザーファンドの保管費用 0.019%(2023.5.13~2024.5.13)
マザーファンドに占める割合 13.41%
●たわら先進国株
マザーファンドの保管費用 0.016%(2023.2.16~2024.2.15)
マザーファンドに占める割合 35.25%
マザーファンドの保管費用 0.006%(2024.5.21~2024.11.20)
※6か月分のため、2倍すると0.012%
マザーファンドに占める割合 70.77%
この結論だけを見ると、スリム先進国株を買うべきだとなりませんか。
返信削除たわら先進国株は巨大な企業DCの下でひっそり暮らす「寄らば大樹の陰」戦略だと理解していました。
返信削除これはファンドの安定運用には寄与するものの、一方で相対的に「活発なファンド」と見なされ、高額な保管費用が課せられてしまうのですね。
コメントありがとうございます。
返信削除>この結論だけを見ると、スリム先進国株を買うべきだとなりませんか。
スリム先進国株のマザーファンドは様々なベビーファンドから投じられたお金で濁流のようになっていると思われますので、その中に飛び込みたくはないです。
>たわら先進国株は巨大な企業DCの下でひっそり暮らす「寄らば大樹の陰」戦略だと理解していました。
たわら先進国株そのものが大樹に育ってしまったということですから、仕方がないです。
たわら先進国株が新規設定された当時のマザーファンドは3000億円規模でした。
たわら先進国株の純資産額が8000億円に育ってもなお35%で済んでいるのは法人営業部門が頑張っているからだと思っています。