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2026年10月3日土曜日

【SBI証券の】信託報酬ゼロの「ゼロカン」が登場【負けられない戦い】

SBI証券は、2026年11月17日、こどもNISA専用ファンド「SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド(愛称:ゼロカン)」を新規設定します。


信託報酬はゼロ。だから「ゼロカン」です。

我が国最大の純資産額を誇る「オルカン」(「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」)の信託報酬は0.05775%(純資産額による報酬スライド制を適用後の実質信託報酬は0.05755%)です。オルカンだと1000万円あたり5755円の信託報酬を徴収されますが(SBI証券で保有すれば投信残高ポイント1750pが付与されるので、保有額1000万円あたりの実質負担額は4005円)、ゼロカンならゼロです。

SBI証券のこどもNISAでゼロカンを買うべきかを考えてみます。


ゼロカンは、こどもNISA限定で積立買付しかできない「こどもNISA専用ファンド」です。

こどもNISAは、子供が18歳になった年の翌年1月1日に成人NISAの「つみたて投資枠」に自動移行しますが、こどもNISAで買ったゼロカンもつみたて投資枠に自動移行し、信託報酬ゼロのまま保有継続できます。なお、つみたて投資枠に自動移行後は買付はできません。

そうすると、ゼロカンをしゃぶり尽くす場合の最適解は、年60万円×10年=非課税投資枠600万円でゼロカンを買って、子供が18歳になって成人NISAの「つみたて投資枠」に自動移行した後も絶対に売らず、死ぬまで保有し続けることです。


信託報酬がゼロと言えば、「野村スリーゼロ先進国株式投信」が思い浮かびます。このファンドが信託報酬をゼロにできた理由は、次の4点です。


1,野村證券のNISA口座でしか買えないこと

2,無料期間は10年という期間限定(ゼロ期間は2030年12月31日で終了)であること

3,既に存在する巨額のマザーファンドを買うだけファンドであり、コストがかからないこと

4,受託会社が野村信託銀行(野村グループ)であること


これに対し、ゼロカンは、


1,SBI証券のこどもNISA口座でしか買えない

2,購入者が死ぬか売却するまでずっと無料

3,SBIアセットは「ETFを買うだけファンド」の運用経験しかない。ゼロカンには既存のマザーファンドは存在せず、今回ゼロから新設する

4,受託会社はSBI新生銀行(SBIグループ)だが、日本マスタートラスト信託銀行(SBIグループではない。三菱UFJと日本生命が80%の株式を保有している)に再委託している


という特徴があります。

つまり、1はよいとしても、2~4が妥当しません。とりわけ野村スリーゼロ先進国株式投信とは異なり、「マザーファンドを買うだけファンド」ではないために運用コストがかかること、再信託受託会社に報酬を支払う必要があること、これら2点によって確実に赤字になるわけです。


そうすると、なぜゼロカンは信託報酬ゼロにできたのかという疑問が浮かびます。SBI証券でこどもNISA口座を作ってもらえれば、子供が成人すれば自動的に成人NISA口座が開設されるため、成人後もずっと利用してもらえる可能性が高いとはいえ(こどもNISAで買って成人NISAに自動移行したゼロカンは売却したら二度と買えないことから、SBI証券をずっと使い続けてもらえる可能性が高い)、それでも購入者が死ぬまで信託報酬ゼロは負担が大きすぎます。

しかも、SBIアセットには現物運用の経験がありません。そのため、オルカンが新規設定されるまで、日本で唯一MSCIジャパン指数のマザーファンドを持っていたステートストリート社に投資顧問を依頼していますが、有価証券届出書には次の記載があります。


ファンドの信託報酬率は0%とします。
※マザーファンドの株式の運用の指図に関する権限の委託を受けた投資顧問会社(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社)に対する報酬はありません。



つまり、SBIアセットもステートストリート社も報酬ゼロということになります。

そうすると、どこで利益を得るのかというと、次のように記載されています。


有価証券の貸付の指図を行った場合には品貸料がファンドの収益として計上されます。
その収益の一部を委託会社と受託会社が受け取ります。
この場合、ファンドの品貸料およびマザーファンドの品貸料のうちファンドに属するとみなした額の55.0%(税抜50.0%)以内の額を貸付関連報酬として受け取ることができます。
※上記各支払先への配分には、別途消費税等相当額がかかります。
※品貸料から委託会社および受託会社が受け取った額は、純資産総額に対して年0.5%を乗じて得た額を超えないものとします。



つまり、マザーファンドが保有する個別株を貸株に出して、その貸株料の55%をSBIアセット(委託会社)とSBI新生銀行(受託会社)が山分けするという仕組みです(ステートストリート社がどこで利益を得るのかは不明です)。

しかも、ゼロカンの大人向けファンドである信託報酬0.055%の「SBI・オールカントリー・インデックス・ファンド(愛称:SBIオールカントリー)」にもゼロカンと同様の記載があります。

SBI証券としては、「こどもNISAでゼロカンを買った親は自分の口座ではSBIオールカントリーを買うだろうから、トータルでの貸株料収入を考えれば利益が出るはずだ」と期待しているわけですね。

※投資顧問会社であるステートストリート社には「ステート・ストリート信託銀行」というグループ会社があります。再信託受託会社が「ステート・ストリート信託銀行」ではないということは、ステートストリート社はそこまでのリスクはとれないと判断したということなのでしょう。

※信託報酬の低さを貸株料でカバーする仕組みはゼロカン特有のものではなく、オルカンは49.5%、楽天プラスオールカントリーは55%を徴収すると記載されています。


SBI証券が今になってSBIオールカントリーを新規設定した理由は、楽天証券の「楽天・プラス・オールカントリー」(信託報酬0.0561%)が大成功し、純資産額1兆円ファンドになったからと思われます。

楽天プラスオールカントリーが新規設定されたのは2023年10月27日ですが、その時点でオルカンの純資産額は1兆5000億円でした。楽天プラスオールカントリーのほうが信託報酬が低いとはいえ、その差は微々たるものであり、誰もがオルカンにかなうわけがないからやめたほうがよいのにと思いましたが、楽天証券の総力を挙げた営業(投信残高ポイントを楽天プラスシリーズにだけ限定復活するというなりふり構わない作戦)が大成功し、1兆円ファンドに至ります。



オルカン(0.05755%) 13兆9105億円

楽天プラスオールカントリー(0.0561%) 1兆0356億円

SBIオールカントリー(0.055%)

ゼロカン(信託報酬ゼロ)

※オルカンの信託報酬は、純資産額による報酬スライド制を適用後の実質信託報酬。



これまで「ETFを買うだけファンド」をいくつも超低コストで投入し、信託報酬の引き下げ競争を牽引してきたSBIアセットが初めて投入する現物運用の全世界株式インデックスファンドであるSBIオールカントリーとゼロカンは、楽天プラスオールカントリーのようにオルカンのシェアの一部を奪って純資産額を集めることができるのでしょうか。

SBIオールカントリーがこけたら、SBI証券には楽天証券ほどの力はなかったことが明らかになってしまいます。負けられない戦いが始まります。


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