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2023年4月26日水曜日

楽天銀行、上場の顛末

興味深い記事を読みました。

こちらです。


●楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末

巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す

https://toyokeizai.net/articles/-/668228



楽天グループは、楽天モバイル事業の赤字(主に基地局設置費用)を賄うため、2023年4月21日、楽天銀行をIPOしました。

想定仮条件は1960円でしたが、機関投資家の懸念で公開価格は1400円となりました。3割減のバーゲンプライスです。


海外の機関投資家から財務状況の説明を求められたことは私もニュースで見ましたが、その具体的な内容は知りませんでした。

上記記事では、機関投資家から示された懸念は「調達・運用の両面で楽天と絡み合う構図」であるとして、その具体的内容を説明しています。


1,調達面の懸念

預金残高は9.1兆円と上位地銀と肩を並べる水準だが、楽天グループ(ネット通販、クレジットカード、証券等)の利用者がメイン口座として利用している


2,運用面の懸念

楽天銀行の運用額は6兆9275億円であるところ、運用額の35%(2兆4303億円)買入金銭債権」である。

※買入金銭債券とは、楽天カードのカード債権や楽天モバイルの通信料債権を楽天信託が証券化した信託受益権のこと。この信託受益権は、楽天カードの利用者の滞納楽天モバイルの利用者の減少によって価値が毀損するリスクがある。



楽天グループは楽天ポイントを利用した「楽天経済圏」(楽天エコシステム)を構築し、グループ全体で一丸となって成長する戦略を採用してきました。

これが最も成功したのが楽天証券です。楽天証券は、2017年8月に楽天ポイントで、2018年12月に楽天カードで投資信託を買えるようにしたことが奏功し、最大手のSBI証券を追い抜くところまで躍進しました。


しかし、2022年6月に投信保有ポイントを廃止し、2022年9月に楽天カード投資の還元率を1.0%から0.2%に激減するという方針転換をし、利用者を驚愕させました。

というのは、楽天証券の仮想敵であるSBI証券は、三井住友カードと連携し、年会費が永年無料となる「三井住友カード(NL)ゴールド」を新設し、大きな波に乗っている最中の出来事だったからです。


投信保有ポイントの廃止カード投資の還元率の激減という2つの出来事によって、おそらく楽天証券が想定していた水準をはるかに超えて、楽天証券からSBI証券に大量の顧客が流出したはずです(SBI証券もそれを見込んで、楽天証券に支払った投信移管手数料を全額キャッシュバックするサービスを常設したものと思われます)。

普通の人が投信を買うとしたらどこか1社で買うでしょうし、2024年にスタートする新NISAの生涯投資枠が1800万円であることはその傾向を更に強めることでしょう。

楽天の顧客は楽天が好きだから楽天を利用しているのではなく、お得に利用できるから楽天を利用しているだけです。楽天からお得さが失われれば、躊躇なく他社に乗り換える人がほとんどだと思われます。

※この点が三井住友カードとの違いです。三井住友カードの伝統的な利用者は、そのブランド力に魅力を感じて年会費を払っています。これは「忠誠心」と言い換えてもよいかもしれません。

SBI証券は、三井住友カードと提携することで忠誠心がある顧客を手に入れることに成功し、更にはお得な「三井住友カード(NL)ゴールド」の新設によって、お得さに魅力を感じているSBI証券の伝統的な利用者の心をつかむことにも成功しました。


楽天グループの三木谷会長は、2022年2月の決算説明会において、


我々は、楽天証券のポイント還元について寛容すぎた。
顧客の中には利益貢献しない者もいる。

http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-2386.html


と発言し、話題になりました。


しかし、この発言は、楽天からポイントを取ったら何も残らないことを余りに軽視したものです。

楽天モバイルの赤字は、楽天グループの利用者に還元すべきポイントの原資が枯渇するという事態を招いています。楽天証券は、ポイントサービスの改悪による顧客離れに耐えかねたのか、あるいは楽天証券のIPOの前に業績をあげたかったのかは分かりませんが、2023年6月から楽天カード投資の還元率を0.2%から0.5%に引き上げる旨を発表しました。

しかし、かつての還元率1.0%からすれば依然として改悪状態が続いているため、これによりかつての利用者が戻ってくるとは思えません。


楽天グループの虎の子と言えば、楽天銀行、楽天証券、楽天カードです。

三木谷会長は、このうち楽天銀行と楽天証券をIPOして事業資金を得ようとしたものの、最初の楽天銀行は機関投資家に足元を見られて30%オフのバーゲン価格で叩き売りするという辛酸を味わいました。2つめの楽天証券でも同様の事態になれば、最後の楽天カードについても叩き売らざるを得なくなるため、失敗を繰り返すことは絶対に許されません。

楽天カード投資の還元率の引き上げが楽天証券の公開価格を引き上げるための作戦だとしたら、継続性は期待できないかもしれません。

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