久しぶりにヤバい記事を発見しました。
こちらです。
https://media.finasee.jp/articles/-/13550?page=1
※よろしければ、次の記事もご覧ください。
●「COIN+」(エアウォレット)に登録して2500p(~6/13)
https://tawaradanshaku.blogspot.com/2024/05/coin2500p613.html
該当部分を引用します。どこがどうヤバいのかを考えながら読んでみてください。
インデックスファンドの商品的な付加価値がどこにあるのかというと、それは連動目標とする指数に対して、どれだけ高い連動率を維持できるのか、という点です。
具体的な事例を挙げてみましょう。三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用しているeMAXISシリーズです。最近では「オール・カントリー」が人気を集めていることで知られています。何しろ「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬率は年0.05775%で(2024年5月17日時点)、業界最低水準です。ちなみに、同ファンドの運用がスタートした時点の信託報酬率は年0.120%で、純資産総額が増えるのに伴って、段階的に料率の引き下げが行われてきました。
ところでeMAXISシリーズには、他のタイプの「オール・カントリー」もあります。正式名称は「eMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)」です。
Slimが付いているのと、付いていないのとで、何が違うのでしょうか。
まず信託報酬率が違います。「eMAXIS Slim(オール・カントリー)」が年0.120%から段階的に引き下げられて、現在は年0.05775%であるのに対し、「eMAXIS(オール・カントリー)」のそれは年0.66%です(2024年5月17日時点)。
なぜ、このような差が生じるのかというと、販売形態が異なるからです。eMAXIS Slimがこれだけの低コストを実現できているのは、販売をオンライン取引に限定し、目論見書等の交付を店頭での手渡しや郵送ではなく、電子交付に限定するなどコスト削減を行っているからです。対してeMAXISはオンライン取引以外に、対面型の金融機関でも扱っています。つまり管理コストがかかる分だけ、「eMAXIS(オール・カントリー)」の方が、高めの信託報酬を徴収しているわけです。
かたや信託報酬が年0.66%、もう一方が年0.120%から段階的に引き下げられて年0.05775%。これだけ信託報酬が異なれば、運用成績にも差が生じるだろうと考えるのが普通です。
ところが、eMAXISとeMAXIS Slimのオール・カントリーで成績を比べるとどうなるでしょうか。eMAXIS Slimのオール・カントリーが設定された2018年10月31日時点の基準価額の推移を比較すると、信託報酬率が圧倒的に低いeMAXIS Slimと、eMAXISのオール・カントリーの成績差は、ほぼないに等しい結果となりました。
同日の基準価額を100として計算すると、eMAXISが2024年3月末時点で237.65。対してeMAXIS Slimは240.97でした。5年と5カ月の運用期間でわずか3.32の差は、あってないようなものでしょう。
これはある意味、正しいことです。両ファンドにとって大事なことは、連動目標である指数に対して高い連動率を保つことなので、両者の運用成績に差が開かないのは、インデックスファンドとして正しい付加価値を提供していることになります。
だとしたら、わざわざ低コストを全面に打ち出したマーケティングは無意味であると解釈できます。繰り返しになりますが、インデックスファンドにとって最大の付加価値は、連動目標である指数に対して高い連動率を保つことなのです。それが達成されているのであれば、極端な話、年率2%の信託報酬率でも問題ないはずです。
思うのですが、そもそも信託報酬率の低さが運用成績にとってプラスの効果をもたらすのは、インデックスファンドではなく、アクティブファンドで問われるべきなのではないでしょうか。
運用者の銘柄選択眼、トレーディング能力で多少劣後したとしても、運用コストが低ければ、その不利をある程度カバーできる。その意味において、運用コストの低さがメリットになると考えることはできます。
しかし、それをインデックスファンドにも当てはめてマーケティングを行っているところに、今の投資信託市場の不健全さがあるように思えます。https://media.finasee.jp/articles/-/13550?page=3
どこがどうヤバいのか、分かりましたか?
三菱UFJアセットが運用している「オール・カントリー」(=日本を含む全世界株式ファンド)はスリムオルカンだけ(スリムオルカンが売れた後、信託報酬を高くしただけの「つみたて全世界株式」を新規設定しています)であり、「eMAXIS全世界株式(オール・カントリー)」というファンドは存在しません。
【2024.5.25追記】
元記事がサイレント修正され、「正式名称は「eMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)」です」の部分が「正式名称は「eMAXIS 全世界株式」です」に変更されました。しかし、元記事の問題点は、ファンド名の表記を間違ったという単純なミスではなく、「日本を含む全世界株ファンド」(スリムオルカン)と「日本を除く全海外株ファンド」(eMAXIS全世界株)とが同じベンチマークを採用しているとの思い込みによって執筆されている(その思い込みが高じて「eMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)」というファンド名を創作する事態を招いてしまった)という点です。元記事は「eMAXIS(オール・カントリー)」と言っていますが、eMAXIS全世界株は日本を含まない点で「オール・カントリー」とは言えません。ファンド名は修正したのにこの部分は修正していないことを見ると、元記事の筆者は「ファンド名の単純な表記ミスをしただけだ」と今でも思い込んでいるのかもしれません。
また、「わざわざ低コストを全面に打ち出したマーケティングは無意味であると解釈できます。繰り返しになりますが、インデックスファンドにとって最大の付加価値は、連動目標である指数に対して高い連動率を保つことなのです。それが達成されているのであれば、極端な話、年率2%の信託報酬率でも問題ないはずです。」との部分についても、インデックスファンドのコストについての理解を誤っています。
「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」と「eMAXIS全世界株式」のリターンを比較してみましょう。信託報酬は、前者が0.05775%で、後者が0.66%です。
1年 40.35% 39.56%(-0.79%)
3年 72.60% 69.74%(-2.89%)
5年 145.14% 138.55%(-6.59%)
したがって、こうなります。
誤「わざわざ低コストを全面に打ち出したマーケティングは無意味であると解釈できます。繰り返しになりますが、インデックスファンドにとって最大の付加価値は、連動目標である指数に対して高い連動率を保つことなのです。それが達成されているのであれば、極端な話、年率2%の信託報酬率でも問題ないはずです。」
正「低コストを全面に打ち出したマーケティングは重要な意味を持ちます。というのは、インデックスファンドにとって最大の付加価値は連動目標である指数に対して高い連動率を保つことなのですが、それを達成するためには指数の下方乖離原因となる「信託報酬を含むコスト」をできる限り低く抑えなければならないからです。信託報酬が高いンデックスファンドは高い信託報酬の分だけ必ず下方乖離するため、信託報酬が低いインデックスファンドより指数に対して高い連動率を保つことができなくなるという問題が発生します。」
郵貯等で販売している「つみたて全世界株式」もオールカントリーだと思いますが、それにしても今回のオルカン叩きは目に余りますね。
返信削除相応のペナルティが必要なレベルです。
「金融ジャーナリスト」という方の記事ですが、相当ヤバい内容ですね(汗)。記事を投稿する際に、他者のチェックはなかったのでしょうか。「全ては自己責任」。身が引き締まる思いです。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>「つみたて全世界株式」もオールカントリーだと思います
そういえば「つみたてんとう」シリーズにも日本を含む全世界株ファンドがありますね。
ご指摘ありがとうございます。該当部分を修正しておきます。
>「金融ジャーナリスト」という方の記事ですが、相当ヤバい内容ですね
スリムシリーズについて二重価格(eMAXISの信託報酬を引き下げないのはけしからん)と批判する人がいますが、スリムオルカンは完全オリジナルでeMAXISの廉価版ではないんですよね。
この記事の筆者も同じにおいがしました。
いつも興味深く拝読しています。
返信削除今回話題にされていた執筆者の方はmoney plusでも連載を持っているのですが、私が不勉強なのかと首を捻ってしまう記事が時折あります。男爵が違和感を覚えられているようで少し安心しました。
https://media.moneyforward.com/authors/380
なるほど、「eMAXIS全世界株式」のベンチマークは、「 MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本、配当込み、円換算ベース)」なので、「eMAXIS全世界株式」と比較すべきは「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」なのですね。
返信削除ところがご指摘のおかしな記事は、「eMAXIS全世界株式」と「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)」とを比較していて、つまりベンチマークが異なるものを比較してしまっているのですね。
意識的にやっているとしたら、大きな問題と言わざるを得ません。
同じ筆者で他にもヤバい記事がありました。新NISAにオススメの投資信託に、農林中金のおおぶねを上げていました。購入時手数料がかかるわ、信託報酬は0.99%だわ、あり得ないです。
返信削除https://media.finasee.jp/articles/-/13484?ms=20240515
警鐘を鳴らして下さりありがとうございました。
コメントありがとうございます。
返信削除>私が不勉強なのかと首を捻ってしまう記事が時折あります。
例えばこういう部分ですよね。
インデックスファンドならば、新規設定の段階で購入したとしても、特に問題はないと考えて良いでしょう。
https://media.moneyforward.com/articles/9350?af=authors_list
>ご指摘のおかしな記事は、「eMAXIS全世界株式」と「eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)」とを比較していて、つまりベンチマークが異なるものを比較してしまっているのですね。
多分、eMAXISオルカンが先に存在して、より低コストのslimオルカンが後にできたと思い込んでいるのでしょうね。
ただ、
正式名称は「eMAXIS 全世界株式(オール・カントリー)」です。
と書いてしまっているのはどうしようもなく残念ですよね。
>新NISAにオススメの投資信託に、農林中金のおおぶねを上げていました。
このファンドはアクティブファンドの中で良く聞くファンドですが、スリムS&P500に、1年、3年、5年リターンの全てで大きく劣後しています。
このような状況なのになぜ勧めるのかを明確にしなければ、読んでいて説得力がないですよね。