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【先頭固定】誰でもできる超カンタン投資術(2024.3)

本稿は、当ブログ(「 たわら男爵のインデックスファンド投資術 」)及び旧ブログ(「 40代でアーリーリタイアしたおっさんがたわら先進国株でベンツを買うブログ 」)の集大成として、何らの知識がなくても実践できる資産形成の具体的なやり方をお伝えするものです(この記事の後で カテゴリ ...

2023年3月29日水曜日

【入門講座⑥】投資信託と経営破綻

 ご質問をいただきました。


Twitterを閲覧していると1つの商品や運用会社や証券会社に集中するのは危険なので分散させるべきというのを見たのですがたわら男爵さんの意見を聞かせて欲しいです。

私はSBI証券でたわらノーロード先進国株式に集中投資していますがこれを楽天証券でslim先進国株式、マネックス証券でニッセイ外国株式みたいに分けた方がいいのでしょうか?
ここまで分けなくてもSBI証券でたわらノーロード先進国株式、slim先進国株式、ニッセイ外国株式に分散させて方がいいのか?



上記質問を単純化すると、次のとおりです。


①SBI証券だけでなく、楽天証券でもたわら先進国株を保有したほうがよいのか

②たわら先進国株だけでなく、スリム先進国株も保有したほうがよいのか



たわら先進国株をSBI証券で購入したとき、登場人物は、①顧客、②販売会社(SBI証券)、③運用会社(アセットマネジメントONE)、④信託銀行(みずほ信託銀行)の4人です。

※アセットマネジメントONEは、SBI証券との間で「募集・販売の取扱い等に関する契約」、みずほ信託銀行との間で「証券投資信託契約」をそれぞれ締結しています。具体的に何をしているのかと言うと、みずほ信託銀行に対して信託財産の運用の指図をしています。

※みずほ信託銀行は、信託財産の保管・管理をしています。みずほ信託銀行が分別管理(=みずほ信託銀行自身の資産とは区別して帳簿に記録)している限り、信託法によってみずほ信託銀行の債権者等から守られています。


お金の流れは、顧客→SBI証券→みずほ信託銀行(信託財産として分別管理)となります。アセットマネジメントONEはお金にはタッチしません(下記リンク先のイメージ図を参照してください)。

https://www.jasdec.com/system/fund/outline/image/index.html


そのため、アセットマネジメントONEが破綻しても、信託財産には影響しません。

ただし、そのままでは信託財産の運用を指図する人がいなくなってしまうため、アセットマネジメントONEの事業を引き取ってくれる運用会社が見つからなければたわら先進国株の運用は終了する旨が約款で明記されています(これを「繰上償還」と言います)。


<委託者の登録取消等に伴う取扱い>

第49条 委託者が監督官庁より登録の取消を受けたとき、解散したときまたは業務を廃止したときは、委託者は、信託契約を解約し、信託を終了させます。 

②前項の規定にかかわらず、監督官庁が信託契約に関する委託者の業務を他の投資信託委託会社に引き継ぐことを命じたときは、この信託は、第52条第2項の書面決議が否決された場合を除き、当該投資信託委託会社と受託者との間において存続します。 

<委託者の事業の譲渡および承継に伴う取扱い>

第50条 委託者は、事業の全部または一部を譲渡することがあり、これに伴い、信託契約に関する事業を譲渡することがあります。 

②委託者は、分割により事業の全部または一部を承継させることがあり、これに伴い、信託契約に関する事業を承継させることがあります。



アセットマネジメントONEの株主はみずほフィナンシャルグループ70%、第一生命ホールディングス30%ですので、アセットマネジメントONEが破綻するリスクは限りなく低いと思われますし、万が一破綻したときは金融庁が他社に運用を引き継がせるでしょうから(たわら先進国株はメジャーな指数をベンチマークとするインデックスファンドのため、引継先を見つけるのは難しくはないでしょう)、私は、アセットマネジメントONEの破綻を心配してたわら先進国株だけでなくスリム先進国株も保有しようとは思いません。



つぎに、SBI証券が破綻したらどうなるかを考えてみます。


上述したとおり、信託財産を管理しているのは、みずほ信託銀行であってSBI証券ではありません。そのため、SBI証券が破綻しても信託財産には影響しません。

ただし、そのままではお金やデータをみずほ信託銀行に取り次いでくれる人がいなくなってしまうため、SBI証券の事業を引き取ってくれる証券会社が見つからなければ「ほふり」を通じて他の証券会社に移管することになります。


SBI証券が破綻し法的整理手続に入ると、当面の間、裁判所によって全ての財産処分行為が禁止されます。そのため、最低でも数か月間(場合によっては1年ほど)は売買ができない状態のまま待たなければならないことになります。

とはいえ、1000万口座を擁するSBIグループの中核をなすSBI証券が破綻するリスクは低いと思われますし、万が一破綻したときは金融庁が他社に引き継がせるでしょうから(たわら先進国株は販売会社がいくつもあるメジャーな投資信託のため、引継先を見つけるのは難しくはないでしょう)、私は、SBI証券の破綻を心配してSBI証券だけでなく楽天証券でも保有しようとは思いません。


もっとも、SBI証券がお金とデータをみずほ信託銀行に取り次がず、顧客のログインページに虚偽の情報(残高や口数等)を表示し、裏でお金を着服していたときは、みずほ信託銀行が保管している信託財産は存在しません。この場合は、1000万円までは日本投資者保護基金が補償してくれますが、1000万円を超えた部分は顧客が泣き寝入りすることになります(SBI証券にお金を着服された被害者はSBI証券の債権者として扱われ、法的整理を経て残余資産があれば配当を受けることになりますが、SBI証券がそのような違法行為に手を染めている状況で配当に回せる資産がSBI証券に残っているとは思えません)。

とはいえ、営業担当者が客から集金したお金を出来心で着服したという違法行為は起こり得るとしても、SBI証券が違法なシステムを開発して客のお金を着服するという会社ぐるみの違法行為が起こり得るかと言えば、その可能性は限りなく低いと言えるでしょう。


なお、金融商品取引法は、証券会社に対し、自己資本比率(リスク相当額÷固定化されていない自己資本額)を120%以上に維持する義務を課しており、3か月に1回の頻度で金融庁に対して最新の自己資本比率を届け出なければならないものとしています。

日本証券所グループが取りまとめた一覧表を見ると、SBI証券の自己資本比率は345%です。楽天証券は321%、マネックス証券は329%、auカブコム証券は364%ですので、いずれも極めて健全な財務状態であることが分かります。

https://www.jpx.co.jp/rules-participants/participants/ratio/tvdivq0000001z14-att/tvdivq000000v4aj.pdf



最後に、みずほ信託銀行が破綻したしたらどうなるかを考えてみます。


上述したとおり、信託財産を管理しているのはみずほ信託銀行ですので、みずほ信託銀行が破綻したら直撃を受けます。

とはいえ、みずほ信託銀行が信託法上の分別義務を守っている限り、みずほ信託銀行自身の資産と他者から預かった資産とは法的に区別されていますので、みずほ信託銀行の債権者に狙われることはありません。

ただし、そのままでは信託財産を保管・管理してくれる人がいなくなってしまうため、アセットマネジメントONEがみずほ信託銀行の事業を引き取ってくれる信託銀行を探すことになるでしょう。データは「ほふり」にあるため、信託銀行が見つからないという事態にはならないものと思われます。


最近、クレディスイスという世界有数の投資銀行が破綻しました。

破綻の原因は、顧客の金を着服したわけではなく、顧客から預かった預金を債券投資で運用していたところ、取り付け騒ぎが発生してキャッシュが足りなくなり、債券を売却してキャッシュを作ろうとしたら売却価格が購入価格を割ってしまい、顧客にお金を返せなくなったということのようです。

銀行は顧客から預かったお金を運用するので、普通預金や定期預金には利息が付きます。利息が付く普通預金や定期預金は、銀行が破綻すると1000万円までしか補償されません(=これを「ペイオフ」と言います)。逆に言えば、顧客は銀行による運用益というリターンを得るために銀行の破綻リスクをとっていることになります(なお、利息がいらないのであれば、決済用預金にすれば全額補償されます)。


預金は銀行が自由に運用できるお金であるため、通常の業務の過程で悪気なく元本を毀損する事態は起こり得ます。融資先が返済不能になって不良債権化するということは珍しくありませんが、その場合は銀行が損失を被るしかありません。

ある程度の損失が発生しても破綻しないように、銀行にも自己資本比率が定められていますが、その比率は、海外拠点のない国内基準行で4%以上、海外拠点のある国際基準行で8%以上です。実際の自己資本比率は11~15%程度しかありません(1位はセブン銀行47%、2位は八十二銀行16%、3位はみずほフィナンシャルグループ15%)。


預金が銀行が自由に運用することができるお金であるのに対し、信託財産は信託銀行が運用することが禁止されたお金であるため、元本を毀損する事態は信託銀行が故意に違法行為をしたときくらいしか発生しません。


このように整理すると、破綻リスクを心配して複数の証券会社に分散する必要はないし、分散するのであれば信託銀行を分散するほうが効果的であることが分かります。

とはいえ、みずほ信託銀行が破綻するリスク、みずほ信託銀行が分別管理を怠るリスク2つのリスクが同時発生しない限り信託財産は守られるため、現実には発生しそうにないリスクを心配して信託銀行を分散させる必要があるのかは疑問です。


というわけで、SBI証券でたわら先進国株を買うだけでよいと思いますが、心配であればスリム先進国株も同時に買ったらどうでしょうか。

ただし、わざわざ別の証券会社で買う必要があるとまでは思いません。


3 件のコメント:

  1. クロスパール2023年3月29日 17:41

    丁寧な回答ありがとうございます。
    今まで通りSBI証券でたわらノーロード先進国株式を購入することにします!

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  2. 日本で個人投資家に知られている運用会社の倒産は見たことありません(よね?)。
    機関投資家(企業年金)向けだと、AIJ投資顧問がありますが。

    規模の利益を追求する業界なので、危なくなったら(なる前に?)どこかと合併すると思われます。アセットマネジメントONE自身も、数えきれない数の合併を経て生まれたものですし。
    自分も、第一勧業アセットマネジメント時代からのファンドを今でも保有しています・笑

    返信削除
  3. コメントありがとうございます。

    >今まで通りSBI証券でたわらノーロード先進国株式を購入することにします

    お役に立てて良かったです。

    >運用会社の倒産は見たことありません

    銀行や証券会社の破綻は聞きますが、運用会社の破綻は聞かないですよね。

    >危なくなったら(なる前に?)どこかと合併すると思われます

    私もアセットマネジメントONEの破綻によるたわら先進国株の早期償還は全く心配していません。

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