日興アセットマネジメントは、2023年4月26日、信託報酬が税込0.05775%の全世界株インデックスファンドを新規設定します。
その名は「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」。
SBI証券で購入することができます。
信託報酬は、税抜0.0525%。
これを運用会社、販売会社、信託銀行が0.0175%ずつ分け合う形になります。
SBI証券は、投資信託の時価に応じてポイントを付与する投信保有ポイント制度を実装していますが、販売会社報酬(消費税抜き)をポイントの付与上限としています。
そうすると、「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」に対する投信保有ポイントは販売会社報酬(税抜)の全額である0.0175%であると思われますので、投信保有ポイントを考慮した信託報酬は0.04025%(税込)となります。
本ファンドのベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」です。
ここで誰もが思い浮かべるのが同じ指数をベンチマークとする「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。
スリムオールカントリーの純資産額は9794億円。これは全てのインデックスファンドの中で第2位の規模です。
果たして新参の「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」がスリムオールカントリーに対抗できるのかが気になるところですが、私は、本ファンドはスリムオールカントリーの牙城を切り崩し、将来的にはスリムオールカントリーにとってかわるほどの可能性があると考えています。
理由は、次のとおり。
1,トレイサーズオールカントリーの信託報酬は0.05775%、スリムオールカントリーの信託報酬は0.1133%(2023年5月11日に引き下げ)。
トレイサーズオールカントリーの信託報酬はスリムオールカントリーの50.97%であり、ほぼ半額です。
投信保有ポイントを考慮した信託報酬は、トレイサーズオールカントリーが0.04025%、スリムオールカントリーが0.0718%。トレイサーズオールカントリーはスリムオールカントリーの56.06%です。
2,スリムシリーズは、米国株においてPayPay投信への対抗値下げができないでいるところ、PayPay投信の信託報酬は0.0915%である。税込0.0915%への対抗値下げができないのだから、税込0.05775%への対抗値下げができるとは思えない。
3,トレイサーズオールカントリーの販売会社は今のところSBI証券だけだが、同様の状況でスタートしたSBI・V・S&P500の純資産額は8312億円であることを考えると、仮に販売会社が増えなくてもそれほどの障害にはならない。
4,トレイサーズオールカントリーは、先進国株マザーファンド、新興国株マザーファンド、日本株マザーファンドを買うだけファンドであるところ、新設の日本株マザーファンドを除き、純資産額も運用実績も十分である。
※日本株マザーファンドが新設なのはMSCIジャパン指数に連動するインデックスファンドが日興アセットマネジメントにはなかったからであり、スリムオールカントリーの日本株マザーファンドもゼロから始まったことを考えれば仕方がないこと。
先進国株マザーファンド
新規設定日 2000年5月17日
純資産額 2580億4900万円(2022年10月26日時点)
新興国株マザーファンド
新規設定日 2006年5月17日
純資産額 959億2100万円(2022年5月16日時点)
日本株マザーファンド
新規設定日 2023年4月25日
純資産額 0円(トレイサーズオールカントリーのために新規設定)
スリムオールカントリーが対抗値下げできないのは明らかですが、問題は、たわらノーロード全世界株式が対抗値下げに踏み切るかどうかです。
私は、たわらノーロード全世界株式は、名称を「たわらノーロード全世界株式(オール・カントリー)」に変更した上で、トレイサーズオールカントリーへの対抗値下げ(できれば同率ではなく少しでもよいので安くする)に踏み切るべきであると考えます。
なぜなら、そうすることで、スリムシリーズに痛撃を与えると同時に、わずかなコスト(※)でたわらノーロードシリーズのブランド価値を劇的に高めることができるからです。
※たわら全世界株の純資産額はわずか51億円しかないことから、たわら全世界株が対抗値下げすることによる売上げへの影響は軽微であるが、純資産額が9794億円もあるスリムオールカントリーが対抗値下げすることによる売上げへの影響は甚大である。
従来の約半額とは、ものすごい価格破壊ですね。
返信削除2017年から2018年の、相次ぐ信託報酬引き下げ合戦を想起します。
当時は先進国株ファンドが主戦場で、約0.2から0.11近くまでほぼ半減し、驚きました。
あれは2018年1月開始のつみたてNISAに合わせた動きであり、今回も来年からの新NISAに合わせて、まだ動きがあるのでしょうか。
制度の拡充・改善は、こういった競争促進効果もあるのだなと知りました。
携帯料金値下げは行政のすさまじい介入で出来たわけですが、こっちは制度を作っただけで各社が勝手に引き下げてくれるっていう。
男爵様
返信削除平素より興味深く拝見しております。
Tracersはトレイサーズかと思います。
Tracersはトレイサーズと読みますよね?
返信削除男爵殿、いつも拝見させていただいております。
返信削除日興Tracersの動き、正直予想外だったのでびっくりしています。
さて、Tracersですが、"トレイサーズ"だと思いますよ。確認のほどお願い致します。
これはスリムシリーズに対して脅威ですね
返信削除スリムシリーズが人気なのは、常に業界最安値を追求しますという方針によるところが殆どだと思いますので、
ここが崩れると大打撃でしょう、多分。
paypayのは指標がかなり違うので追従しないことに対して「約束と違う」という印象は全く持ちませんが、
これは合致してるので値下げしない理由は無いと考えています。
シリーズのどれかが信頼を失うと、シリーズごと信頼を失うので、赤字覚悟で邪魔をしにきたのかもしれませんね。
興味本位ですが、これは面白くなってきました。
名称はトラッカーズではなく、トレイサーズです。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>制度の拡充・改善は、こういった競争促進効果もあるのだなと知りました。
同感です。
つみたてNISAもお得な制度でしたが、新NISAはとてつもなくお得な制度ですから、おいしいパイの取り合いをみんなが勝手にしてくれるという非常にいい環境になりつつありますよね。
>Tracersはトレイサーズ
皆様、ご指摘ありがとうございます。
本文を訂正しました。
>paypayのは指標がかなり違うので追従しないことに対して「約束と違う」という印象は全く持ちません
PayPay投信、VTIを買うだけファンドを出してしまったんですよね。
>赤字覚悟で邪魔をしにきたのかもしれませんね。
マザーファンドを買うだけファンドですから、先進国株と新興国株はほぼノーコスト、MSCIジャパンのマザーファンドだけは新設しなければなりませんが、トレイサーズのブランド価値を高めるための宣伝広告費と考えれば十分に許容できるのでないでしょうか。
>興味本位ですが、これは面白くなってきました。
たわらが行かないとシリーズ全体が沈む危機になる反面、行けばシリーズ全体が飛躍するチャンスになるという意味でも面白いですね。
トレイサーズには先進国株(MSCI-Kokusai)も同率で出してほしい。
返信削除新興国株いらないので。
S&P500は出さないのかな?
どうせなら一気にスリムシリーズを総攻撃してほしいところ。
届出を見てみましたが、信託報酬外のその他手数料に上限0.1%のコスト記載がありますね。
返信削除PayPay投信のように見せかけの信託報酬と実態がどうなるか気になります
コメントありがとうございます。
返信削除>トレイサーズには先進国株(MSCI-Kokusai)も同率で出してほしい。
同感です。
>S&P500は出さないのかな?
2022年8月に「インデックスファンドS&P500」を作るときにマザーも新設していますのでタダ乗りができませんし、作ったばかりの「インデックスファンドS&P500」が死んでしまうので、無理だと思います。
>信託報酬外のその他手数料に上限0.1%のコスト記載があります
日興アセットマネジメントに聞いてみました。
「0.1%よりかなり低くなるものと思われるが、試算した数値は開示しない」