興味深い記事を読みました。
ミンカブの元記事は会員限定ですが、ヤフーニュースに全文が転載されています。
●週刊誌記事を読んだ70代男性最後の賭け「ハイリスク投信5000万円一括購入じゃ」の結末
https://news.yahoo.co.jp/articles/16fd355d941f27fd7b01837ecc7a20a1bf5f646d?page=1
記事の内容は、次のとおり。
1,毎月分配型の投資信託が高収益を上げているという週刊誌の記事を読んだ70代男性が相談に来た。
2,相談内容は、1億5000万円の資産があるが、そのうちの5000万円で外貨建てのハイイールド債券を投資対象とする投資信託を一括購入したいというもの。
3,銀行に預けても金利が低いので、週刊誌で見た投資信託を買って、分配金を孫に渡す小遣いにしたい。
上記記事の筆者は「リスクとリターンの関係を説明して翻意させようと思ったが、無理だった」と述べ、相談者が帰り際に言った言葉を引用しています。
あんちゃんの言うことはよく分かった。あんちゃんの案がそのまま出来れば苦労しねえ。せっかく自分が頑張って築いた資産の山に自分で穴を掘る(取り崩す)ことにすごく抵抗があるんだ!
https://news.yahoo.co.jp/articles/16fd355d941f27fd7b01837ecc7a20a1bf5f646d?page=3
ハイイールド債券とは、高い(ハイ)利回り(イールド)の債券のことです。別名は「ジャンク債」。
なぜ利回りが高いのかというと、信用格付けが低いことから、高い利回りにしないと買ってくれる人がいないからです。
つまり、ハイイールド債は、高い利回りというリターンを得るためにデフォルトリスク(=発行者が破綻して紙切れになるリスク)をとっていることになります。
ところで、最近、債券の中でも高い信用力があったクレディスイスのAT1債が無価値になりました。
日本でも、三菱UFJモルガンスタンレー証券が950億円ほどを顧客に販売していたとしてニュースになっています。
●MUFG、クレディSのAT1債950億円を富裕層に販売ー無価値
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-14/RT3DW6T0G1L601
クレディSのAT1債は3月、スイスの銀行大手UBSグループによる同社の買収合意を受け、約160億スイス・フラン(約2兆3800億円)相当が無価値になった。三菱モルガンの販売分はその4%程度に当たる。
他の証券会社では、みずほ証券が40億円強のクレディSのAT1債を販売しており、無価値となったことを受けて顧客への説明や対応を行っている。大和証券でも顧客に販売した数億円のAT1債が無価値となった。各広報担当者が述べた。一方、野村証券の広報担当者は、日本国内でクレディSのAT1債を販売したことはないと説明。SMBC日興証券はコメントを控えた。
上記記事によれば、三菱UFJモルガンスタンレー証券の販売額は全体の4%ということですから突出して多いことが分かります。
三菱UFJモルガンスタンレー証券は、それを超重要顧客に売り付けて大損させたことになります。記事によれば、購入したのは約1500の顧客口座で、その大半が個人の富裕層ということですから、1人あたり数千万円から数億円は購入していることになります。
三菱UFJモルガンスタンレー証券としても、三菱UFJモルガンスタンレー証券からクレディスイスのAT1債を購入した顧客としても、この債券には高い信用力がある(クレディスイスが破綻しない限り元本保証されている)と考え、安心して販売し、安心して購入したものと思われます。
両者の認識は正しかったのですが、クレディスイスという世界トップクラスの投資銀行が破綻するというまさかの事態が発生し、投資したお金が全てなくなってしまいました。
債券は、発行体が元本保証(=満期になったら額面金額の払戻しをする約束)をしてお金を預かり、満期まで利子を支払って預かったお金を自由に運用できるというものです。
これを投資家の側から見ると、満期まで発行体にお金を拘束される代償として発行体から利子がもらえるということになります。
債券の利回りは一律ではありません。利回りが高いものもあれば低いものもあります。
利回りが債券ごとに異なる理由は、債券の発行体ごとにデフォルトリスク(=債券の発行体が満期に額面金額の払戻しができなくなるリスク)が異なるからです。
デフォルトリスクが低い債券(先進国の国債など)は利回りを低くしても買い手が現れますが、デフォルトリスクが高い債券(ハイイールド債券など)は利回りを高くしなければ買い手が現れません。
端的に言えば、債券投資は、発行体のデフォルトリスクをとる代償として利子というリターンを得る投資方法ということになります。
ここで冒頭の発言に戻ります。
せっかく自分が頑張って築いた資産の山に自分で穴を掘る(取り崩す)ことにすごく抵抗があるんだ!
この人は、取り崩すことを「穴を掘る」と表現しました。
しかし、デフォルトリスクが高い債券を買うことは、穴が開いているバケツに水を入れるようなものです。
自分で頑張ってバケツに水をためたのに、見ず知らずの人から「このバケツに水を入れてくれれば、入れてくれた水を増やして返してあげる」と言われて水を移し替えたところ、移し替えた先のバケツには穴が開いていた。
非常に悲しいですね。
発行体のデフォルトリスクを適切に評価できない人は債券投資をしてはいけませんが、デフォルトリスクが低い債券は利回りも低いため、投資する旨味に欠けます。
これに対し、株式投資、特に先進国の株式を時価総額比で買う投資方法は資本主義の可能性に賭ける投資方法です。
資本主義は、経済活動によって得られた富を再投資することによって自己増殖する性質をもっています。その恩恵を最も受けるのが株式投資です。
インデックス投資は、資本主義に内在する自己増殖力を信じ、世界経済の発展に伴う右肩上がりの株価上昇に賭ける投資方法です。
しかし、新興国株インデックスの4割を占める中国や韓国では、資本主義の発展に不可欠な前提条件であるグローバリズム(ヒト・モノ・カネの移動の自由)が十分に機能していないのではないかという懸念があります。
したがって、私は、あえて新興国株投資をする必要はないと考えます。新興国を開発して発展させるのは先進国企業ですから、新興国が生み出す利益は先進国株を通じて間接的に得ることができるとも考えられるからです。
日本も先進国のメンバーですが、少子高齢化が襲う日本の将来は明るいものではありません。ただし、だからと言ってグローバリズムが機能しない新興国とは異なり、積極的に投資先から排除する必要まではないと考えますが、信頼できる投資先(日本を含む先進国株ファンド)がありません。
私は、発行体のデフォルトリスクに賭けるのではなく、資本主義の可能性に賭けたいと考えて「たわらノーロード先進国株式」を保有しています。
※私は、高配当株投資に否定的ですが、その理由は同じです。
その会社の事業内容が魅力的であれば、株主は「事業活動によって得た利益は事業に再投資して更に増やしてほしい(=配当金に回すことで事業に再投資するお金を減らさないでほしい)」と希望するでしょうから、高配当株にはならないと思っています。
昨年度から積み立てNISAを開始した投資初心者なのですが、1点質問宜しいでしょうか。
返信削除世の多くの投資家ブロガーが1回/年のリバランスを推奨されていますが、積み立てNISAの場合、リバランスを行う≒積み立てた投信の売却と追加購入が生じる事になるので、無駄なコストが生じてしまうのではないかと理解しています。
コストを掛けてでもリバランスは必要なのでしょうか。
色々な方のブログや記事を読んでいる中で、たわら男爵様の価値観が現状の私に一番近いと思い、たわら男爵様の解釈を知りたく質問させて頂きました。
コメントありがとうございます。
返信削除>世の多くの投資家ブロガーが1回/年のリバランスを推奨されています
これは特定口座の話で、NISA口座の話ではないと思います。
NISA口座では売却すると損をしますので、一度買ったものは売却すべきではありません。
リバランスの質問をした者です。
削除早速のご返答誠にありがとうございます。
認識に誤りが無く安心しました。
積み立てNISAと来年からの新NISAを超える額で投資出来る予定は現時点無いのでリバランスは当面考慮せず、保有し続ける事に致します。
こんにちは!前回も質問させて頂いております。今回悩んでるので相談させて下さい。
返信削除現在定期預金が1000万(利率0.2)
手元に800万準備しております。
SBI証券で
インデックス投資を9000万
(たわらノーロード1500万、後はS&P等です)
外国個別株1000万
ここからは大和証券担当の方に
ソフトバンク株400万
ソフトバンク劣後債600万
運用しております。
今回の相談は大和証券からソフトバンク社債の利率がいいのが出るのでどうですか?と連絡頂いております。
定期預金や手元にあるお金があるので購入した方がいいのでしょうか?
男爵様のご意見聞かせて下さいませ。
コメントありがとうございます。
返信削除>大和証券からソフトバンク社債の利率がいいのが出るのでどうですか?と連絡頂いております。
定期預金や手元にあるお金があるので購入した方がいいのでしょうか?
ソフトバンク社債の格付けは、S&Pが「BB+」です。
これはジャンク債の中でもましなほうという意味です。
私はほしいとは思えません。
お返事ありがとうございます
削除悩んでたので相談して良かったです。