「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産額が、2023年4月14日、1兆円に到達しました。
スリムオールカントリーは、全世界の株式に時価総額比で投資するインデックスファンドです。
米国ETFを買うだけファンドではなく、マザーファンドを通じて現物株に投資しています。そのため、三重課税コスト問題は発生しません。
【参考】
●【基礎知識】三重課税コスト
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1202.html
さて、冒頭でご紹介したとおり、スリムオールカントリーの純資産額が1兆円を超えました。
ウエルスアドバイザーのサイトで検索すると、我が国の全てのファンド(ETF、DC専用、ラップ口座専用ファンドを含む全て)の中で純資産額が1兆円を超えるものは14ファンドしかありません。
また、我が国の全てのファンド(ETF、DC専用、ラップ口座専用ファンドは除く。アクティブファンドを含む全て)の中で純資産額が1兆円を超えるものは、次のとおり4ファンドしかありません。
1,eMAXIS Slim米港株式(S&P500) 1兆9393億円
2,AB・米国成長株投信Dコース(Hなし) 1兆8071億円
3,ピクテグローバルインカム株式(毎月分配) 1兆0300億円
4,eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 1兆0017億円
このように、純資産額が1兆円を超えるファンドは4ファンドあるところ、インデックスファンドとアクティブファンドは2本ずつで、2本のインデックスファンドはeMAXIS Slimシリーズが独占しています。
かつて、全世界の株式に時価総額比で投資したいのであれば、VT(バンガード社の米国ETF)を買うしかありませんでした。
我が国では全世界株インデックスファンドのニーズがないと思われてきたからですが、この分野に挑戦して最初に成功したのが楽天全世界株(VTを買うだけファンド)であり、楽天全世界株の成功を見て二匹目のドジョウを狙ったところ大量のウナギがとれてしまったのがスリムオールカントリーになります。
さて、リーサルウェポン(他のインデックスファンドを皆殺しにする)と言われたVTですが、その経費率(日本の投信で言うところの「隠れコスト」を含む総額のコスト)は継続的に引き下げられて現在は0.07%。
純資産額は335億3600万ドル。日本円(1ドル134円で計算)にすると4兆4938億円です。
スリムオールカントリーとVTを比較すると、VTのほうが圧倒的に優れています。
しかし、日本人が日本から投資するという観点で考えれば、
1,VTには三重課税コスト問題がある。
2,VTを買うには米国株口座を開設し、円を米ドルにしなければならない。
3,3か月に1回の頻度で必ず分配金が交付され、その都度、必ず課税される(米国10%+日本20.315%)。
4,つみたてNISA口座では買えず、2024年からスタートする新NISA口座でも非課税投資枠の満額までは買えない。また、分配金が出るので、分配金の分だけ実質的に生涯投資枠が目減りする。
という問題や面倒くささがあります。
また、スリムオールカントリーは、自主的に業界最安値を更新することはしませんが、他社が業界最安値を更新したときは同率まで対抗値下げをする旨を宣言しています(私はこれを「コバンザメ作戦」と名付けました)。
最近では、業界最安値を単独更新したたわら全世界株にコバンザメし、信託報酬を税込0.1133%まで引き下げる旨を発表しています(引き下げの実施日は2023年5月11日)。
スリムシリーズのコバンザメ作戦は、スリムシリーズの規模がまだ小さい挑戦者だった頃は許せました。
しかし、スリムシリーズは、現在では我が国を代表する唯一無二のインデックスファンドシリーズになりました。横綱が猫だましや立会の変化を繰り返して優勝を重ねてもリスペクトされないように、私はコバンザメするスリムシリーズをリスペクトすることはできません。
そうすると、たわら全世界株に頑張ってほしいところですが、唯一にして最大のウイークポイントは52億円という純資産額の少なさです。
【参考】
●ファンドの純資産額が100億円あればひとまず安心
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1789.html
ファンドの純資産額は100億円は欲しいところです。
たわら全世界株もそう考えて業界最安値を単独更新したのでしょうが、下げ幅が小さすぎてスリムオールカントリーに即座に数字を合わせられてしまい、全く話題になりませんでした。
2024年に新NISAがスタートしますが、雑誌やネット記事では「どのファンドを買ったらよいか」が大々的に特集されることでしょう。
その波に乗れば純資産額を飛躍的に拡大することができますが、その波を逃すと埋没してしまいます。
何が言いたいのかというと、このままだと雑誌やネット記事がこぞってスリムオールカントリーを礼賛し、新NISAを始める全国民がスリムオールカントリーを買う未来が来てしまうということです。
トレーサーズオールカントリーは、「新NISAの定番ファンド」になることを狙ったのでしょうが、指数のライセンス料や各種書類の印刷費用等をファンド負担にして信託報酬を安く見せかけるという作戦が新規設定前に発覚してしまいました。
そのため、そこそこの純資産額は集まるでしょうが、もうSBI・V・S&P500のような成功は望めないでしょう。
そうすると、スリムオールカントリーと「新NISAの定番ファンド」という称号をかけてガチンコ勝負できるのはたわら全世界株しか存在しないことになります。
しかし、現状では純資産額にかなりの差があります。スリムオールカントリーではなく、あえてたわら全世界株を買おうとする人は物好きしかいないでしょう。
この現状を打破する方法は「異次元の値下げ」しかありません。
指数のライセンス料や各種書類の印刷費用等を会社負担のままでトレーサーズオールカントリーの信託報酬にコバンザメすれば、米国ETFを買うだけファンド(雪だるま先進国株)にコバンザメしたスリム先進国株が絶賛されてスリムシリーズが大成功する端緒となったように、たわら全世界株は「新NISAの定番ファンド」という地位を確立し、スリムオールカントリーが到達した1兆円を超え、VTの4兆5000億円も射程に入るのではないか、私はそう思うのです。
指数のライセンス料や各種書類の印刷費用等を会社負担のままでトレーサーズオールカントリーの信託報酬にコバンザメしたら、運用会社は逆ざやとなってしまうのではないですか?
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>運用会社は逆ざやとなってしまうのではないですか?
野村スリーゼロは、10年限定ですが文字通りゼロでやっていけています。
その理由は、マザーファンドを買うだけファンドだからだと思っています。
野村證券やLINE証券が野村スリーゼロを新NISA(つみたて枠、成長枠両方)に投入したら、男爵さんはNISA口座移管して野村スリーゼロ買い付けますか?
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>男爵さんはNISA口座移管して野村スリーゼロ買い付けますか?
2031年1月以降は競合ファンドと同水準まで信託報酬が引き上げられることを考えると、SBI証券でたわら先進国株を買って0.05%のTポイントをもらったほうがよいと思っています。