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2023年4月14日金曜日

Tracersオールカントリー、たわら全世界株・スリムオールカントリーより高コストか

トレーサーズオールカントリーの信託報酬の安さ(=競合ファンドの半額)の理由は、他社では会社負担にしている12種類の費用をファンド負担(=顧客負担にすることでした。

【参考】

●Tracersオールカントリー、0.05775%の安さの理由(「内部で試算しているが、開示するつもりはない」)

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/tracers005775.html




※よろしければ、次の記事もご覧ください。


楽天証券、楽天カード投資の還元率を0.2%→0.5%(ノーマル)、0.75%(ゴールド)、1.0%(プレミアム)

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/02050510.html




トレーサーズオールカントリーがファンド負担(=顧客負担)にする12種類の費用は、次のとおりです。


① ファンドの計理業務(設定解約処理、約定処理、基準価額算出、決算処理等)およびこれに付随する業務(法定帳簿管理、法定報告等)に係る費用。

② 振替受益権に係る費用ならびにやむを得ない事情などにより受益証券を発行する場合における発行および管理事務に係る費用。

③ 有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書および臨時報告書(これらの訂正に係る書類を含みます。)の作成、印刷および提出に係る費用。

④ 目論見書および仮目論見書(これらの訂正事項分を含みます。)の作成、印刷および交付に係る費用(これらを監督官庁に提出する場合の提出費用も含みます。)。

⑤ 信託約款の作成、印刷および交付に係る費用(これを監督官庁に提出する場合の提出費用も含みます。)。

⑥ 運用報告書の作成、印刷および交付に係る費用(これを監督官庁に提出する場合の提出費用も含みます。)。

⑦ ファンドの受益者に対して行なう公告に係る費用ならびに信託約款の変更または信託契約の解約に係る事項を記載した書面の作成、印刷および交付に係る費用。

⑧ 格付の取得に要する費用。

⑨ ファンドの監査人、法律顧問および税務顧問に対する報酬および費用。

⑩ ファンドおよび主要投資対象である各マザーファンドの運用において利用する指数の標章使用料。

⑪ ファンドおよび主要投資対象である各マザーファンドの運用において利用する指数の指数値、構成銘柄、構成比率等の情報および投資対象市場の動向や特性等に関する情報の入手に要する費用。

⑫ ファンドおよび主要投資対象である各マザーファンドの運用において、クリアリング機構を利用した場合に生じる諸費用(当該関連費用を受託会社から請求された場合も含みます。)。



目論見書(現時点では目論見書が交付されていませんが、有価証券届出書の記載事項が目論見書にそのまま転記されるため、ここでは「目論見書」と記載します。以下同じ)には、次のように記載されています。


以下の諸費用およびそれに付随する消費税等相当額について、委託会社は、その支払いをファンドのために行ない、ファンドの日々の純資産総額に対して年率0.1%を乗じた額の信託期間を通じた合計を上限として、支払金額の支弁を信託財産から受けることができます。(以下「実費方式」といいます。)なお、①から⑦までに該当する業務を委託する場合は、その委託費用を含みます。また、実際に支払う金額の支弁を受ける代わりに、その金額をあらかじめ合理的に見積もった上で、見積額に基づいて見積率を算出し、かかる見積率を信託財産の純資産総額に乗じて得た額をかかる諸費用の合計額とみなして、信託財産から支弁を受けることができます。(以下「見積方式」といいます。)ただし、委託会社は、信託財産の規模などを考慮して、信託の設定時または期中に、かかる諸費用の見積率を見直し、年率0.1%を上限として、これを変更することができます。委託会社は、実費方式または見積方式のいずれを用いるかについて、信託期間を通じて随時、見直すことができます。これら諸費用は、委託会社が定めた時期に、信託財産から支払います。


このように、指数のライセンス料を含む12種類の費用について、実費徴収方式と見積額徴収方式のいずれかを運用会社の判断で選択することができるが、どちらの方式を選択したときも上限は年率0.1%であるとされています。


上記12種類の費用のうち、監査費用は他社もファンド負担にしているため、競合ファンドの運用報告書でも明記されています。

しかし、上記12種類の費用のうち監査費用を除くものについては、他社では会社負担のため、運用報告書には記載されておらず、果たしていくらになるのか皆目見当がつきません。

日興アセットマネジメントが試算値を開示してくれればよいのですが、残念ながら「開示するつもりはない」と明言しています。

【参考】

●Tracersオールカントリー、0.05775%の安さの理由(「内部で試算しているが、開示するつもりはない」)

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/tracers005775.html


しかし、私は発見しました。

同社の「インデックスファンドNASDAQ100」の目論見書に指数のライセンス料を含む上記12種類の費用をファンド負担にする旨が記載されていたのです。日興アセットマネジメントに電話したとき、なぜこれを教えてくれなかったのか非常に残念です。


インデックスファンドNASDAQ100」の運用報告書「1万口当たりの費用明細」の「(d)その他費用」の部分を見てみます。


第1期 0.084%

監査費用 0.004%

印刷費用 0.080%

その他 0.000%


第2期 0.066%

監査費用 0.004%

印刷費用 0.062%

その他 0.000%


指数のライセンス料(目論見書の記載のうち「⑩ ファンドおよび主要投資対象である「インデックス マザーファンド NASDAQ100」の運用において利用する指数の標章使用料」の部分)の記載がなかったので、日興アセットマネジメントに聞いてみました。


ライセンスフィーは発生しており、「(d)その他費用」の「その他」に含まれているが、「その他」に分類される諸費用(ライセンスフィーを含む)の合計額が0.001%を下回っているので「0.000」という表記になっているとのことでした。


そうすると、トレーサーズがファンド負担にしている12種類の費用のうち、他社でもファンド負担にしている監査費用を除いたものは、「インデックスファンドNASDAQ100」の実績値では0.062~0.08%となります。

この年率0.062~0.08%は、他社ではファンド負担とされない費用(ライセンス料や各種書類の作成・印刷・提出費用を含む)の総額であるため、トレーサーズオールカントリーも概ね0.062~0.08%程度(ただし、0.1%が上限)の追加コストがかかるものと推測されます。


そうすると、


Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)

信託報酬0.05775%+0.062~0.08%=0.11975~0.13775%


たわらノーロード全世界株式

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(2023年5月11日に引き下げ予定)

信託報酬0.1133%


となり、「インデックスファンドNASDAQ100」の実績値を前提にすると、たわら全世界株、スリムオールカントリーのほうがトレーサーズオールカントリーよりも低コストということになりそうです。



【2023.4.14 11:55追記


コメント欄で下記質問をいただきました。


今回のトレイサーズオールカントリーは、その販売ルートから、大多数が電子交付の顧客と思われ、「印刷費用」はだいぶ下がるのでは?


インターネット販売のみの「PayPay投信インデックスファンドシリーズ」の運用報告書に記載されている印刷会社等に支払う目論見書、運用報告書等の作成、印刷、交付等に係る費用」を見てみます。


日経225 0.088%

NYダウ 0.091%

NASDAQ100 0.058%


というわけで、販売会社がインターネット専業ないしインターネット販売に限定されていたとしても安心することはできません。


5 件のコメント:

  1. 調査・問い合わせありがとうございます。勉強になりました。

    突出しているのが「印刷費用」というのが、少々気になります。
    同項目は運用報告書によると、「印刷費用は、法定開示資料の印刷に係る費用」。

    このファンドは多くの地銀・信金で販売されており、対面販売・非電子交付の比率が高いと思われます。運用報告書も、かなりの数を印刷納入しているのではないでしょうか。
    (運用報告書の印刷納入までは運用会社負担、顧客への郵送費は販売会社負担と理解しています)

    この印刷費用は、12種類の費用のうち3〜7と思われ、中でも非電子交付の顧客数に連動する4〜7が極めて多いように思います。
    今回のトレイサーズオールカントリーは、その販売ルートから、大多数が電子交付の顧客と思われ、「印刷費用」はだいぶ下がるのでは?と思うところです。
    まあ、フタを開けてみないと分からないという結論は変わりませんが。

    ちなみに、三菱UFJ国際投信が公式声明を出しましたね。やはり、「対抗するのか?」との問い合わせが多かったのでしょうか。
    https://www.am.mufg.jp/text/oshirase_230413.pdf

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  2. コメントありがとうございます。
    上記の点を追記しましたのでご確認ください。

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  3. 疑問への追記ありがとうございます。大変参考になりました。
    個人的にはファーストペンギン上等で、楽天全世界株、楽天全米株なども設定当初から買っているのですが、さて、今回どうしようかな。。。

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  4. > ~の合計額が0.000%を下回っているので

    0.000999…%を下回っているっていうことでしょうか?
    0.000%を下回るだと、マイナス以外ありえなくなるので…。
    まあ、書かれている趣旨に影響はない枝葉ですが、気になったのでご教示いただけたらありがたいです。

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  5. コメントありがとうございます。

    >今回どうしようかな

    スタートする前から悪評がネットを駆け巡ってしまっていますので、なかなか厳しいかもしれません。

    >0.000999…%を下回っているっていうことでしょうか?

    「0.001%を下回る」でしたね。
    本文を訂正しました。

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