セゾン投信は、2023年6月28日の株主総会で、創業者であり2007年4月から代表取締役を務めていた中野晴啓氏を取締役に選任せず、同氏は本日をもってセゾン投信の一切の役職を解任されました。
同社代表取締役社長の園部氏は、本日付けで次のメッセージを公表しています。
直販、つまりセゾン投信に直接口座を開きご購入いただけるお客さまと繋がることは今後も変わらず私たちの大切な柱であり、更なる拡大を目指します。
販売会社を通じた長期資産形成の普及については、以前より、私たちの理念、運用哲学、投資スタイルに共感してくださる金融機関と一緒に取り組んできました。今後も同様の理念を分かちあえる金融機関があれば、多くの皆さまに長期積立投資をご提供する機会として提携の検討を行いますが、いたずらに販売会社との提携拡大を進めることはございません。
大切なことを変えずに守り続けていくことで、セゾン投信がさらに多くのお客さまから支持される運用会社になれることを目指してまいります。これからもセゾン投信はお客さま全部主義のセゾン投信であり続けます。
要するに、「セゾン投信は今までどおりで何も変わらない」ということを何度も言葉を変えて訴えているわけですが、もしそうであるとするならば中野さんを解任する必要はなかったはずです。
中野さんがいたのでは中野さんに反対されてできなかったことをやろうと思ったからこそ中野さんを解任したわけですから、「セゾン投信は今までどおり何も変わらない」はずがなく、園部社長の上記コメントは極めて不誠実であると言うべきです。
なお、園部社長は中野さんの解任に賛成票を投じたそうです。
園部社長は、上記コメントの中で、セゾン投信のこれからについて次のように述べています。
私はこれを見た瞬間、「園部社長は何も分かっていない」と思いました。
というのは、私は、当時、SMTグロ株とセゾングロバラの積立投資をしていました。大暴落によって多額の含み損が発生したとき、オンラインで積立設定の解除ができるSMTグロ株はすぐに積立投資をストップしましたが、オンラインでの手続ができないセゾングロバラはそのまま積立投資が続くことになり(積立設定をストップする方法を調べる気力すらわきませんでした)、そのおかげで相場回復期に多額の含み益に転化することになりました(セゾン投信の直販口座を閉じた時に639万2132円の確定利益を手にすることができたのも、大暴落の最中にバイアンドホールド=売らずに均等額積立投資を続けたからです)。
セゾン投信の強みは、セミナーと直販を通じ中野さんと顧客との間に強固な結びつきがあることです。
しかし、相場が暴落し、これまでの積立投資で積み上げた含み益が凄い勢いで失われ、逆に含み損が日々拡大し続ける最中、これまでどおり均等額積立投資を継続するのは困難です。先行きに対する不安が中野さんへの信頼を上回った時、積立投資をストップしたりこれまで購入したファンドを売却したいと思ってしまうことになりますが、その時の最後の砦がオンラインでの手続ができないという時代遅れの面倒くさいセゾン投信のシステムでした。
ともあれ、中野さんは本日解任されてしまったわけですから、今更その是非を論じても仕方がないことです。中野さんがいなくなってもセゾン投信にはまだ価値があると思う人はセゾン投信との取引を続ければいいだけのことですが、多くの人は「これから中野さんはどうするんだろう」ということが知りたいのだろうと思います。
ブルーグバーグは先ほど下記記事を公開しました。
●セゾン投信創業の中野氏、退社して運用新会社を設立へ-年内事業開始
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-28/RWVLS5T0AFB401中野晴啓氏は、ブルームバーグとのインタビューで、同社を退社した上で、新たな運用会社を設立し、年内の事業開始を目指す意向を明らかにした。
すでに大手の金融機関や個人などから出資の意向を受けているという。日本株と世界の株式に分散投資する2つのファンドを組成する方針で、アクティブ運用を担う運用担当者も採用する。
中野さんがセゾン投信を創業したのは16年前のことですが、その当時と今とでは決定的に違うことがあります。
すでに大手の金融機関や個人などから出資の意向を受けているという。日本株と世界の株式に分散投資する2つのファンドを組成する方針で、アクティブ運用を担う運用担当者も採用する。
中野さんがセゾン投信を創業したのは16年前のことですが、その当時と今とでは決定的に違うことがあります。
それは超低コスト競争が加速し、行きつくところまで来てしまったということです。
野村アセットマネジメントは、2023年7月10日、信託報酬0.05775%の「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」を新規設定します。
販売会社は野村證券だけですが、私は、今後SBI証券や楽天証券でも販売されるようになれば、このファンドが多くの人にとってのマストバイファンドになるのではないかと考えています。
中野さんが新規設定する「日本株と世界の株式に分散投資する2つのファンド」が超低コスト化したはじめてのNISAオールカントリーやたわら先進国株などと真っ向勝負できるものなのかどうか、その詳細発表を楽しみに待ちたいと思います。
中野さんが新規設定する「日本株と世界の株式に分散投資する2つのファンド」が超低コスト化したはじめてのNISAオールカントリーやたわら先進国株などと真っ向勝負できるものなのかどうか、その詳細発表を楽しみに待ちたいと思います。
今後の中野さんの行動が今後のセゾン投信とどう違ってくるのかが注目ですね。長期投資家なら中野さんの方を参考にしたいのは言うまでもないですが、セゾンも逆に悪い例として注目ですね。
返信削除中野さんの人望があれば、新会社設立も現実的でしょうし、
返信削除実際に出来れば口座を開きたいです。
中野さんを応援したいです。いくらかの信託報酬は、ファンクラブ年会費です。
とはいうものの、新会社は当面赤字続きでしょうね。
新会社のファンドマネージャーはどうような人物か注目です。
積立王子は、間違いなく日本の個人投資家醸成の立役者であり、60才の挑戦を応援します。還暦のご自身がファンドマネージャーになるのではなく、任せられる運用担当者を連れてくるという姿勢も好印象です。
返信削除と、心情としては応援するのですが、大事な虎の子をそこに託すかどうかは、うーん、内容を吟味してからですね。
何も変わらないなら何も変えなくて良かったのに説明が自己矛盾ですね.これまで通り理念を共有できる金融機関とだけ販路拡大をしていくだけで何も変わらないのに
返信削除セゾン投信,アナログであった故相場が大きく動く時デジタルで手続きをその時の感情では動けないし,書類が届く間に市況を受け入れるようになってしまってて結果的に好成績に寄与するんですよね
システム改修に費用が掛かるのでできるだけアナログのままにしておきたいようですが,積立額の変更などはオンラインで手続きできるようにしないといけない時代になったことは中野さん自身も自覚されていたので発言すればするほどうーんと思います
>最後の砦がオンラインでの手続ができないという時代遅れの面倒くさいセゾン投信のシステム
返信削除同感です。
便利にするのは、かえって仇になりそうです。
中野さんが新規設定するファンド、コア・サテライト戦略のサテライトとして取り入れたくなるような、魅力的なファンドに仕上がると良いですね。
返信削除(コアはあくまで良質なインデックス)
コメントありがとうございます。
返信削除>今後の中野さんの行動が今後のセゾン投信とどう違ってくるのかが注目ですね。
差別化をどう演出するのかについて、中野さんはいろいろと悩んでいると思います。
直販が重要なキーワードになりそうですが、今から直販を始めても成功するのは難しいと思うのですけれど大丈夫なのでしょうか。
>中野さんを応援したいです。いくらかの信託報酬は、ファンクラブ年会費です。
セゾン投信のままだったら、コスト面で競争力のあった時代からの付き合いを続けるという人も多かったと思いますが、今から新しく新会社で新ファンドを立ち上げるとなると、コスト面での競争力が必須条件であり、コスト面での魅力がないと付いていく人は少ないと思います。
>心情としては応援するのですが、大事な虎の子をそこに託すかどうかは、うーん、内容を吟味してからですね。
多くの人がそう考えていると思います。
仕方がないことですよね。
>何も変わらないなら何も変えなくて良かったのに説明が自己矛盾ですね.
「販社を増やして10倍に増やします。直販やセミナーで客を増やすという方法はもう時代遅れですので減らしていきます」という本音を言えなかったということは、セゾン投信の顧客のニーズとは違う方向に向かっていこうとしていることを園部社長も十分に分かっているのでしょうね。
>便利にするのは、かえって仇になりそう
中野さんがいれば「他社との差別化であえてやらない」という一言でみんな納得したはずであることを考えると、非常にもったいないことをしたと思います。
>コア・サテライト戦略のサテライトとして取り入れたくなるような、魅力的なファンドに仕上がると良い
中野さんは、新NISAでメインの投資先としてみんなが選択したくなるファンドを目指しているはずです。
ただ、コスト面で非常に厳しい戦いになると思います。
SBIアセットマネジメントが、新NISAに対応するような、「ほったらかし投資用」の投資信託はすでにできたと思ってみていたら、今度は「部品」となりそうな超低コストファンドを多々取り揃えておりますね。
返信削除これってSBI証券が、松井証券の投信工房よりも高機能かつ低廉で、ほぼ自動運転可能な「ロボアドバイザー」を準備しているのではと邪推します。
裏を読みすぎかもしれませんが、新たなファンドにとって
①超低コストインデックスファンド(や、インデックスファンドを用いたバランスファンド)との競争
と、
②ロボアドバイザー等の低コスト化の競争
に挟まれるのではないかと。
新しい投信を立ち上げるとしたら
大変な船出になると感じます。
セゾン投信を買収不可能であったなら、中野さんは新しいファンドにどんな工夫をしてくるのでしょうか。
コメントありがとうございます。
返信削除>SBI証券が、松井証券の投信工房よりも高機能かつ低廉で、ほぼ自動運転可能な「ロボアドバイザー」を準備しているのではと邪推します。
この視点は思いつきませんでした。
そうかもしれませんね。
>中野さんは新しいファンドにどんな工夫をしてくるのでしょうか
超低コストインデックスファンドに対抗できるファンドが作れるのであれば、セゾン投信の会長時代にセゾン投信でやっていたはずです。
セゾン投信時代でさえできなかったわけですから、新会社ではもっと難しいのではないかと考えており、私は期待はしていません。