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2023年10月31日火曜日

【入門講座⑨】指数のライセンスフィー

インデックスファンドは、特定の指数(=インデックス)をベンチマークとし、その指数に連動する運用を目指します。

指数を作成するのは指数提供会社です。運用会社は、指数提供会社に使用料(=ライセンスフィー)を支払うことで、その指数の使用が可能になります。
指数のライセンスフィーは、一般的には運用会社が負担します。運用会社は、信託報酬の一部である運用会社報酬を受け取り、指数のライセンスフィーを含む様々な費用を支払います。指数のライセンスフィーが運用会社報酬を超えると赤字となり、当該インデックスファンドが売れれば売れるほど運用会社が損をすることになるため、「運用会社報酬 >指数のライセンスフィー」ということになります。

しかし、コスト競争の激化により、信託報酬は税込0.05775%の水準まで下がりました。既に全世界株ファンドの分野は0.05775%が当たり前になり(トレーサーズオールカントリーはじめてのNISAオールカントリースリムオールカントリー)、現在は米国株の分野に0.05775%の波が押し寄せつつありますニッセイ・S米国株式500へのスリムS&P500の対抗値下げを待っている状態)。

信託報酬が0.05775%だと、運用会社報酬は0.01925%になります。運用会社はここから指数のライセンスフィーを支払うわけですが、指数のライセンスフィーはいったい幾らなのでしょうか。
信託報酬を税込0.05775%の水準に引き下げるきっかけを作ったトレーサーズオールカントリーが指数のライセンスフィーを運用会社負担にすることができずファンド負担にしたことからも、運用会社報酬0.01925%は指数のライセンスフィーを支払えるかどうかのギリギリのラインであるようにも思えます。



週刊ダイヤモンド 2023年11月4日号」(2023年10月30日発売)33~35頁の特集記事「ぶっちゃけ覆面座談会 インデックス投信の大競争 真の勝者は「指数提供会社」」では、指数のライセンスフィーの具体的な金額について説明されています。
概要は、次のとおりです(詳細は、上記特集記事の原文をご覧ください。この特集記事を読むためだけの目的で雑誌を買ったとしても満足できるだけの価値があります)。



1,指数のライセンスフィーには2種類ある。ミニマムの金額運用残高に一定割合を掛けたもので、この2種類の合計額を運用会社は指数提供会社に支払っている。

2,ミニマムの金額は、年150~200万円程度が多い。

3,運用残高に一定割合を掛けたものは、運用会社と指数提供会社との交渉によって決まり、守秘条項によって口外が禁止されているが、相場は次のとおり。
(1)全世界株 0.02~0.03%スリムオールカントリー0.01~0.02%くらいではないか)
(2)TOPIX 0.0025~0.01%
(3)日経225 0.0032~0.015%
(4)NASDAQ100 0.07~0.08%



記事によると、


1,ライセンスフィーは、ETF→公募投信→私募投信の順番で安くなる
2,投信の規模が大きくなると指数提供会社と価格交渉がしやすくなる。スリムシリーズは他社よりも安い
3,ライセンス料のほかにデータ料も徴収されるが、データ料の値上げは珍しくない。


ということでした。


30頁には三菱UFJアセット社長のインタビュー記事が掲載されていますが、三菱UFJアセット社長は「スリムシリーズは採算割れにはなっていません」と述べています。
運用会社報酬が0.01925%で、ライセンスフィーが0.01~0.02%ですから、トレーサーズオールカントリーが運用会社負担にすることができなかった理由はこれです。

では、なぜスリムオールカントリーが運用会社負担にできたのかについて、記事33頁は、親会社が信託銀行であり(三菱UFJアセットは三菱UFJ信託銀行の100%子会社)、運用会社報酬と信託銀行報酬の「トータルで採算を考えればいい」からだとしています。

ちなみに、トレーサーズオールカントリー(運用会社は日興アセット)とはじめてのNISAオールカントリー(運用会社は野村アセット)の信託銀行はどちらも野村信託銀行です。
指数のライセンスフィーについて、トレーサーズオールカントリーが運用会社負担にできず、はじめてのNISAオールカントリーが運用会社負担にできたのは、信託銀行がグループ会社かどうかが影響しているのかもしれません。

※三井住友信託銀行は、日興アセットの91%の株式を保有しています。トレーサーズオールカントリーの信託銀行について、日興アセットが三井住友信託銀行ではなく野村信託銀行にした理由は分かりません。
なお、トレーサーズシリーズは、三井住友信託銀行から野村信託銀行に途中で変更されています(カッコ内の数字は税抜信託銀行報酬)。


2021.11 グローバル2倍 三井住友信託銀行(0.023%)
2022.8 ゴールドプラス 三井住友信託銀行(0.023%)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2022.10 配当貴族 野村信託銀行(0.020%)
2023.2 三分法 野村信託銀行0.020%)
2023.4 オールカントリー 野村信託銀行(0.0175%)


3 件のコメント:

  1. 記事の紹介ありがとうございます。原文も読んでみようと思います。
    注目のS&P500のライセンスフィーはどれくらいなのでしょうね。

    ニッセイS米国株式500は、新興企業の類似指数で0.05775%を実現しました。本家のS&P500を使うファンドで値下げを迫られるスリムは厳しいですね。

    それにしても、信託銀行報酬とトータルでプラスなら良しとか、母体のETFが売れれば良し(ブラックロックの話です)など、ステージが変わったというか、もはや運用会社単独の話ではないのですね。

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  2. 現物運用のスリムシリーズと、巨大ETFを買うSBアセットシリーズ、どちらにもメリット・デメリットがあると思いますが、男爵様の好みはどちらですか?

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  3. コメントありがとうございます。

    >注目のS&P500のライセンスフィーはどれくらいなのでしょうね。

    記事では言及されていませんが、私も気になります。

    >本家のS&P500を使うファンドで値下げを迫られるスリムは厳しいですね。

    きっと今、ネゴしているところではないでしょうか。

    >ステージが変わったというか、もはや運用会社単独の話ではないのですね。

    ニッセイもたわらも業界最低水準を目指すとは明言していなかったのに、そのパンドラの箱を開けたのはスリムですから、これはもうしょうがないですよね。

    >男爵様の好みはどちらですか?

    現物運用のほうです。

    米国ETFを買うだけファンドは、投資対象が米国株でないと三重課税コストがかかりますし、構造上どうしても米国ETFの経費率が上乗せされるため、もはや今の超々低コスト競争時代には競争力を失ってしまったと思っています。

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