SBIアセットマネジメントは、2024年1月30日、米国高配当株ETFを投資対象とし、米国ETFが出した分配金を顧客に分配することを目指すファンドを2本、新規設定します。
●米国高配当株 ETF(SPYD&VYM)に投資する年 4 回決算型ファンド 2 本の募集・設定のお知らせ
https://www.sbiam.co.jp/news/pdf/39e8959b5d50e3940293b2f592e6393b90a7ec19.pdf
新たに設定・運用を開始するのは、「SBI・SPDR・S&P500 高配当株式インデックス・ファンド(年 4 回決算型)」(愛称:雪だるま(S&P500 高配当株式分配重視型))と「SBI・V・米国高配当株式イン デックス・ファンド(年 4 回決算型)」(愛称:SBI・V・米国高配当株式(分配重視型))で、いずれも ETF(上場投資信託)に投資することで米国の高配当株式を実質的な投資対象とし、毎年 2 月、5 月、 8 月、11 月の決算時に分配金を支払うことを目指す年 4 回決算型での設定となります。
「SBI・SPDR・S&P500 高配当株式インデックス・ファンド(年 4 回決算型)」は、米国の大手運用会社であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの関連会社が提供する「SPDRポートフォリオ S&P500高配当株式 ETF(SPYD)」に投資し、S&P500 高配当指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果を目指す本邦初の投資信託となります。
「SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド(年 4 回決算型)」は、世界最大級かつインデックスファンドの草分け的な存在である米国バンガード社の ETF「バンガード・米国高配当株式 ETF (VYM)」を組み入れた低コストのインデックスファンド・シリーズ「SBI・V シリーズ」における新フ ァンドとなります。既に設定・運用している年 1 回決算型の「SBI・V・米国高配当株式インデックス・ ファンド」(愛称:SBI・V 米国高配当株式)と同様に、FTSE ハイディビデンド・イールド・インデッ クス(円換算ベース)の値動きに連動する投資成果を目指すファンドです。
つまり、「信託報酬0.0638%+米国ETFの経費率」で、
雪だるまSPYD(年4回決算型) SPYDの経費率0.07%、配当利回り4.76%
SBI・V・VYM(年4回決算型) VYMの経費率0.06%、配当利回り3.29%
の2種類のファンドが新規設定されます。
ところで、米国ETFは3か月に1回の頻度で分配金を出します。
米国ETFを直接購入すると、
分配金100
アメリカの税金(100×10%)が天引きされて90
日本の税金(90×20.315%)が天引きされて71.7165
となり、100だったはずの分配金が71.7165まで減ってしまいます(アメリカと日本の双方が同じ分配金に課税する結果になるため、「二重課税」と呼ばれています)。
配当所得を特定口座から出して確定申告すれば「外国税額控除」を利用して二重課税された税金の一部を取り戻すことができますが、2024年3月申告分(2023年1月1日から同年12月31日までの所得)からは「住民税の申告不要制度」を利用することができなくなります。そのため、多くの人が特定口座から出すわけにいかず泣き寝入りすることになるものと思われます(私も泣き寝入りします)。
しかし、2020年1月1日に「投資信託等の二重課税調整制度」がスタートし、外国に支払った税金が自動的に調整されて日本国に支払う税金が減ることになりました。
【参考】
何を言いたいのかというと、雪だるまSPYDとSBI・V・VYMには「投資信託等の二重課税調整制度」が適用されて税金が自動的に安くなるということです(電話確認済)。
ちなみに、SBI・V・VYMには「年1回決算型」(2021年6月29日新規設定、純資産額238億円)も存在しますが、こちらは分配金を出さない運用をしているため、「投資信託等の二重課税調整制度」は適用されず、無分配投信の全ての受益者がそうであるように二重課税については泣き寝入りすることになります。
※無分配投信に「投資信託等の二重課税調整制度」が適用されない理由は、日本国の課税額から外国の課税額を差し引く仕組みだからです。分配金を出さないと日本国の課税額はゼロであるため、外国の課税額を差し引く原資が存在しないことになります。
※同様の理屈で、新NISA口座で買っても「投資信託等の二重課税調整制度」は適用されません。なぜなら、新NISA口座で買った投信が分配金を出したとしても、日本国の課税額はゼロだからです。
というわけで、非常に興味深いファンドが登場しました。
私は買いませんが、運用会社の工夫が感じられる良いファンドだと思います。
やっとでましたね。しかも二重課税調整制度の効果が大きい高配当。これを契機に他社からも二重課税自動調整投信が出て来ることを期待します。
返信削除投資信託等の二重課税調整制度。そんな深い話があったのですね。勉強になりました。単に、毎月分配型だと新NISA不可だから年4回にしたのかな、程度に思っていました。
返信削除あ、でも、NISA口座で買ったら関係ないのか。うーん、難しい。
特定口座から出さなければ外国税額控除は利用できませんでしたでしょうか?
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>これを契機に他社からも二重課税自動調整投信が出て来ることを期待します。
本ファンドが1匹目のドジョウを掴むことができるかどうかにかかっていると思います。
>NISA口座で買ったら関係ないのか
新NISAは生涯投資枠があるため、分配金が出るファンドを買うと損です。
>特定口座から出さなければ外国税額控除は利用できませんでしたでしょうか?
外国税額控除を利用するためには確定申告が必須です。
唯一の例外が分配金を出す投信(二重課税調整制度に対応したもの)を買うことになります。
男爵さんの記事を拝読して、運用会社の工夫が見られる商品だなあと感じました。50代以降の定年が近い世代や60代の年金を受給する前後の世代に訴求出来そうな投信ですね。
返信削除自分だったら、メインにはしないけどポイントの一部で少し買う位は有りかなあと思いました。
質問ですが、東証上場の米国高配当株ETFは、二重課税の調整はされていないという認識であっていますか?
コメントありがとうございます。
返信削除>東証上場の米国高配当株ETFは、二重課税の調整はされていないという認識であっていますか?
可能性は高いのですが、事前には分からないようです。
【解説】
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ee6cce6878c430011c18269
【可能性が高いETFの一覧】
https://www.jpx.co.jp/learning/basics/tax/tvdivq00000170tw-att/nlsgeu000004gjxm.pdf
返信ありがとうございます。
削除リンクを確認しました。
>「住民税の申告不要制度」を利用することができなくなります。そのため、多くの人が特定口座から出すわけにいかず泣き寝入り
返信削除すみません。ここがよく理解できませんでした。
多くの人が外国税額控除で戻る額よりも住民税が高くなる分の方が多額になるということでしょうか。本当に?
コメントありがとうございます。
返信削除>多くの人が外国税額控除で戻る額よりも住民税が高くなる分の方が多額になるということでしょうか。本当に?
単純に住民税の増減だけで判断することができないからです。
住民税の課税所得は、所得税と違って様々な住民サービスの計算根拠に利用されるため、何か見逃していることがあると怖いです。
そのため、多くの人が私のように泣き寝入りするのではないかと思っています。
なお、私のケースでは、非課税世帯から離脱することになるデメリットが読み切れないため、事態が更に複雑化しています。
返信削除> 住民税の課税所得は、所得税と違って様々な住民サービスの計算根拠に利用される
返信削除なるほど、一例として「保育料は住民税の所得割課税額を元に算出される」といったことでしょうかね。
そのように理解しました。ありがとうございます。
いつも示唆に富む記事をありがとうございます。ところで非分配VYMと分配VYMの配当再投資ではリターンに差がありますか?
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>非分配VYMと分配VYMの配当再投資ではリターンに差がありますか?
投信が出した分配金を自分で再投資したとしても、既に20.315%の所得税・住民税が徴収されています。
外国税の二重課税調整制度で20.315%がいくらに減額されるかは分かりませんが、仮に10%の外国税の全額が戻ったとしても分配金の10.315%は税金で減ります。
72の法則によれば、年4%で運用できれば18年で2倍になります。
手元に20万円がある人が、今払って10万円で済ませるか、18年後に20万円払うかを考えると分かりやすいと思うのですが、
1,今10万円払うと、18年後には残りの10万円が20万円に増えている。
2,今なにも払わなければ手持ちの20万円を運用でき、18年後には40万円に増えているが、ここから20万円を払う必要がある(18年後に売却しなければ、20万円の支払時期は売却時まで無制限に繰り延ばすことができる)。
ということになりますので、保有期間が長ければ長いほど分配金を出さないファンドのほうが有利になります。
70代で年金受給の高齢者です。
返信削除SPYDやVYMの東証ETFの登場を待っていましたが、こちらの投信は、その代替となりえるのでしょうか?
高配当株と投資信託というのは、そもそも相性が悪いとの認識です。
制度上、諸経費を控除した配当・利子のみを原資とする健全な分配金が出る東証インデックスETFと違い、非上場投資信託の分配金はETFで認められない値上がり益や繰越分配対象額、さらには元本さえも原資にして分配金に出しえます。
ご教示いただけますと幸いです。
コメントありがとうございます。
返信削除>非上場投資信託の分配金はETFで認められない値上がり益や繰越分配対象額、さらには元本さえも原資にして分配金に出しえます
米国ETFの分配金をそっくりそのまま顧客に分配するというコンセプトですから、この点は心配する必要はないと思っています。
ただ、資産形成の手段としては分配金を出すファンドは不適であり、無分配投信を買って必要な時に必要なだけの金額を売却すればよいと思っています。