中野晴哲さん(セゾン投信創業者)と澤上篤人さん(さわかみファンド創業者)が対談で、興味深い話をしています。
対談(前編と後編)は、下記リンク先で全文が無料で読めます。
●日経平均株価が史上最高値、いよいよ「大暴落」始まる?新NISAの投資初心者は大火傷か、過剰流動性はもう限界超えた
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79506
●日本株「大暴落」の先にある本物の資産運用立国、これからはインデックス型「オルカン」「S&P」よりアクティブ型?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79507
2024年1月にスタートした新NISA口座では、スリムオルカンとスリムS&P500の2本のファンドに人気が集中しています。
2024年1月の1か月間で流入したお金は、スリムオルカンが3428億円(運用会社の発表値)、スリムS&P500が2090億円(QUICK資産運用研究所の推計値)です。
また、1月の第3営業日(第1営業日の買付注文の反映日)に流入したお金は、スリムオルカンが1013億円、スリムS&P500が659億円(いずれもQUICK資産運用研究所の推計値)です。
上記対談で、澤上さんは「株価はいつ弾けてもおかしくない。明日弾けてもおかしくない。暴落が始まったら、リーマン・ショック以上の落ち込みになる」と述べ、中野さんも「大きな調整は近い将来必ず来る」と述べています。
その上で、新NISA口座でスリムオルカンやスリムS&P500を買っている人に対し、次のように述べています。
中野
多くの人が「オルカン」に飛びついていますよね。「S&P500」にも大量の資金が流入しています。このタイミングでオルカンやS&Pに投資をした人の中には、過去20年などの実績だけを見て、「確実に儲かる」と思い込んでいる人も少なくないでしょう。
でも、いずれ株価は下落トレンドに必ず転じます。そのとき、パニックになる人が出てくることを心配しています。株価が回復するまで、ぐっと耐えて長期保有できればよいのですが、資産運用に関する理解が浅いと、株価が下落していく怖さに耐えられません。
過剰流動性で相場がずっと右肩上がりになってきたという成功体験から抜けられないんですよ。
澤上
確かに、オルカンもS&P500も、長期で持ち続けられればいいですよ。だけど、これから暴落して長期低迷するとしたら、そのときにみなさん、耐えられますか。
すぐにアクティブファンドの宣伝文句になる部分は読み飛ばせばよいとして、お二人が懸念している上記部分については、私も同じように感じています。
スリムオルカンやスリムS&P500への急激な資金流入は、付和雷同で流入しただけとしか思えません。付和雷同で流入したお金は、きっと付和雷同で流出することでしょう。
株価が2割下がると、「おいおい大丈夫かな」という気持ちになります。
「まだ急落にすぎない。暴落とは呼べない」と強がりつつも、内心では「いよいよ来るんじゃないか」とみんなビクビクし始めます。
株価が3割下がると、「こりゃヤベェな」という気持ちになります。
ここら辺で、単なる「急落」ではなく「暴落」ではないかとみんなが思い始めます。
株価が4割下がると、「歴史的な大暴落が始まった」「資本主義はもう終わりだ」「システムが崩壊したからもう元には戻らない」などという悲観論が圧倒的になります。
澤上さんが言及しているリーマンショック(2008年に発生。1929年の世界恐慌以来の大暴落)では、世界の株価は5割下がりました。
しかし、株式市場はこれまで何度も暴落しましたが、常に暴落前の史上最高値を更新し続けてきました。
暴落によって4割、5割株価を下げたとしても、その後、更なるパワーで上昇に転じてきたのです。
暴落が発生したとき、我々の目の前には2つの起こり得る可能性が存在します。
1つめの可能性は、「今回の暴落によって今までとは違うパラダイムシフトが起こり、暴落前の株価水準に戻ることはもうない」というもの。
2つめの可能性は、「今回の暴落も今までと同様に一時的なものにすぎず、数か月後ないし数年後には暴落前の史上最高値を更新し続けることになる」というもの。
これら2つの可能性のうち、どちらに乗るべきかと今問われたら、誰でも2番目を選ぶことでしょう。
しかし、暴落の最中で大抵の人は冷静な判断ができないため、実際には多くの人が1番目を選び、パニック売りをしてしまいます。
「コロナショックでは追加投資をしたし、売らなかったから大丈夫」と思ってはいけません。
コロナショックは暴落の原因がはっきりしており、半年で相場が回復した点で、これまでの暴落の中でも異例中の異例と言えるほど軽いものだったからです。
誰もがパニックになり、どうしたらいいのか分からずに右往左往し、非論理的な売り買いをする地獄絵図が繰り広げられるのが本当の暴落相場の姿です。
バンガード社の創業者であるジョン・C・ボーグルの口癖であり、最後の著書のタイトルでもある言葉は「ステイ・ザ・コース」というものです。
航路を忠実に守る限り、船は目的地に安全に到着することができます。
インデックスファンドをバイアンドホールドする限り、先人が苦労して発見した安全な航路にタダ乗りすることができます。
しかし、暴落が発生すると、冷静な判断ができなくなります。「自分は危険な航路を進んでいるのではないか。さっさと船から下りたほうがよいのではないか」という不安な気持ちにさいなまれます。下落幅が大きければ大きいほど、不安な気持ちは大きくなっていきます。
すぐに船から下りようとして、航路を無視して最寄りの港へ闇雲に逃げ込もうとする行為を「パニック売り」と言います。航路から外れると、多くの船は座礁し、積荷は海の藻屑と消え去ります。
重要なことは、「航路を守る限り安全なのだ」ということを相場が比較的穏やかなときに繰り返し自分の頭に叩きこみ、腹落ちさせておくことです。
ここで「航路」とは投資計画のことです。均等額積立投資という投資計画を決めたのであれば、相場があがろうがさがろうが関係なく、常に同じ金額を同じタイミングで投下し続け、絶対に売ってはなりません。
相場が比較的穏やかなときに自分で決めた投資計画こそがインデックス投資における航路(コース)です。
暴落時には「ステイザコース、ステイザコース」と念仏のように唱え続けて航路を守り続けなければなりません。
航路(均等額積立投資)を守り続ける限り、我々は安全に目的地(暴落前の史上最高値を更新し続ける未来)に到着することができます。
インデックス投資では、目的地に至る航路が全ての人に公表されています。
我々に試されるのは、航路を進む船に乗った後は目的地に着くまで決して下りないという覚悟だけです。
インデックス投資を始めてまだ10年にも満たない若輩者ですが、コロナショックの際に「(上げも下げも)相場なんて読めるものじゃない」と思い知らされました。
返信削除インデックス本の名著はそういう時に心の支えになりましたね。今後も守り続けていきたいものです。
そもそもこれだけ資本主義や金融システムが発達し、リーマンクラスの暴落など生涯起こりうる可能性はありません。無限に金を刷れば暴落は回避できると世界中が気づいてしまったからです。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>、コロナショックの際に「(上げも下げも)相場なんて読めるものじゃない」と思い知らされました。
私も、当時、個人名義の口座の投信を売却して法人名義の口座で買い直しました。
基準価額が下がれば下がるほど、個人名義の口座で納める税金が少なくなり、法人名義の口座で売却したときの益金が増えますが、タイミングが分からなかったので点ではなく面で買い直していたら、いつの間にかコロナショックが終わってしまっていました。
>リーマンクラスの暴落など生涯起こりうる可能性はありません
そのように楽観することができないのが相場というものだと思っています。
>>リーマンクラスの暴落など生涯起こりうる可能性はありません
返信削除「ありません」とあたかも絶対ないかのように言い切るのは正常性バイアスではないですか?
株式の仕組み上、明日か十数年後なのかはわらないですが、リーマンクラスの暴落はいずれ起こるものだと思われます
まあ、複数カ国の複数銘柄に分散して長期で保有すれば企業価値の増大や配当や自社株買いなどにより暴落前の水準にいずれ戻るとは思いますが
コメントありがとうございます。
返信削除>リーマンクラスの暴落はいずれ起こるもの
事前に覚悟しておかないと、パニック売りをしてしまい、せっかくの資産形成の機会を逃すことになりますので、覚悟しておくことは重要だと思っています。
たわらノーロード先進国株が30000円代になって喜んでいます。たわら男爵さんのおかげです。ありがとうございます。
返信削除私は生活費は別なので暴落がきても大丈夫です。ずっと持ち続けますね。含み益も嬉しいです。
コメントありがとうございます。
返信削除>たわらノーロード先進国株が30000円代になって喜んでいます。
私も嬉しいです。
>暴落がきても大丈夫です。ずっと持ち続けます
今の嬉しい気持ちは、相場に居続けたからこそ味わえたものです。
お互いずっとバイアンドホールドを続けていきたいものですね。
はじめはブラックマンデー、その後も幾つかの暴落と言われるナイアガラの滝を味わってきましたが脱落する事なく無事に過ごしています。
返信削除ビットコインも再び活気づいてるようだし、この先も暴落は有り得るでしょうが狼狽することなく相場を楽しんでいけたらなの思いで取り組んでいます。
コメントありがとうございます。
返信削除>この先も暴落は有り得るでしょうが狼狽することなく相場を楽しんでいけたらなの思いで取り組んでいます
暴落したら安値で買えると喜び、史上最高値を更新したら含み益が増えたと喜ぶ。
相場があがってもさがっても喜べるのがインデックス投資のよいところですよね。
たわら男爵さん、こんばんは。このブログを読んでいて
返信削除バブル崩壊前に不動産や株を手放した人の事を思い浮かべました。誰もがまだ上がると信じていたときにバブルが弾けました。私も5年前からインデックス投信をしており、そこそこ利益を確保できています。一旦すべての投信を売却して現金化することは間違った選択なのでしょうか。やはり暴落してもホールドがよいのでしょうか。とても迷っています。
コメントありがとうございます。
返信削除>5年前からインデックス投信をしており、そこそこ利益を確保できています。一旦すべての投信を売却して現金化することは間違った選択なのでしょうか。
間違った選択です。
多くの人がそのように考えて、トランプ相場をとり逃しました。
短期的な株価の値動きは誰にも予測できませんが、資本主義が続く限り長期的には右肩上がりに上昇していきます。
安全資産の置き場についてなのですが、個人向け国債にするのか、それより金利の高い住宅ローンを繰り上げ返済するのか悩んでいます。(住宅ローン控除は使えません。)十分にリスク資産には資金を投下しているので追加でこちらを増やすことは考えていません。男爵ならどうされますか?手元流動性を減少させても繰り上げ返済するか、あえてそちらは放置して、より金利の低い個人向け国債を買いますか。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除>手元流動性を減少させても繰り上げ返済するか、あえてそちらは放置して、より金利の低い個人向け国債を買いますか
今の水準の労働収入が今後も続く見込みが高いのであれば、住宅ローンを繰上げ返済したほうがよいと思います。