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【先頭固定】誰でもできる超カンタン投資術(2024.3)

本稿は、当ブログ(「 たわら男爵のインデックスファンド投資術 」)及び旧ブログ(「 40代でアーリーリタイアしたおっさんがたわら先進国株でベンツを買うブログ 」)の集大成として、何らの知識がなくても実践できる資産形成の具体的なやり方をお伝えするものです(この記事の後で カテゴリ ...

2024年12月11日水曜日

たわら先進国株、第9期運用報告書は問題なし

たわら先進国株は、2024年10月15日に第9期の決算日を迎えました。
第9期運用報告書が公開されたので、その内容を確認してみます。


たわら先進国株の「信託報酬を除くコスト」は、次のとおりです。

第1期 0.036%(第1期の運用期間は10か月のため、推定値)
第2期 0.038%
第3期 0.035%
第4期 0.048%
第5期 0.043%
第6期 0.069%
第7期 0.051%
第8期 0.034%
第9期 0.029%(2023.10.13~2024.10.15)
【参考】
ニッセイ外国株 0.027%(2022.11.22~2023.11.20)
スリム先進国株 0.038%(2023.4.26~2024.4.25)
※計算期間が異なるため、ニッセイ外国株とスリム先進国株の信託報酬を除く実質コストは参考値です。


上記3ファンドの「信託報酬」は、全て同じ(税込0.09889%)です。



上記3ファンドの「信託報酬を除くコスト」は、次のとおりです。

1,ニッセイ外国株 0.027%
2,たわら先進国株 0.029%
3,スリム先進国株 0.038%



上記3ファンドの「信託報酬を含むトータルコスト」は、次のとおりですす。

1,ニッセイ外国株 0.127%
2,たわら先進国株 0.129%
3,スリム先進国株 0.137%



SBI証券は投信マイレージサービスを提供していますので、投信残高ポイントを考慮してみます。投信残高ポイントは税抜販売会社報酬と同率のため、販売会社報酬がもっとも高いたわら先進国株の投信残高ポイントが最も高いことになります。
たわら先進国株は、ニッセイ外国株より14%、スリム先進国株より22%も安いことになります。

1,たわら先進国株 0.129%→投信残高ポイント(0.05%)考慮後0.079%
2,ニッセイ外国株 0.127%→投信残高ポイント(0.0351%)考慮後0.0919%
3,スリム先進国株 0.137%→投信残高ポイント(0.0349%)考慮後0.1021%



1000万円分を保有したときのコスト(投信残高ポイント考慮後の年額)は、次のとおり。

1,たわら先進国株 7900円
2,ニッセイ外国株 9190円(たわら先進国株より1290円高い)
3,スリム先進国株 1万0210円(たわら先進国株より2310円高い)



もう少し深堀りしてみます。
※ここからは、前回(第8期運用報告書の記事)の内容とほぼ同じです(数字を最新版に替えただけ)。


冒頭で整理したとおり、たわら先進国株の第6期はコスト高(第5期の1.6倍)に苦しみましたが、第7期は26%減、第8期は51%減、第9期(今期)は58%減となり、新規設定以来で最安水準に戻りました。

第6期のコストは0.069%と高かったのですが、その内訳は次のとおりです。

売買委託手数料 0.005
有価証券取引税 0.020
監査費用 0.02
信託事務の処理に要する費用等 0.043


ここで「信託事務の処理に要する費用」とは、信託銀行が作成した請求書に記載された金額(信託銀行の手間賃)のことです。
たわら先進国株はマザーファンドを買うだけファンドであり、現物株を保有しているのはマザーファンドになりますが、現物株はマザーファンドが保管しているのではなく信託銀行が保管しています。マザーファンドが現物株を売買するときは信託銀行に指示して行うところ、この事務作業量に応じた手間賃を信託銀行から請求されます。
この手間賃が「信託事務の処理に要する費用」となります。
そのため、マザーファンドが保有する現物株の売買の回数が多ければ多いほど、信託銀行からより多くの手間賃を請求されることになります。
また、マザーファンドが保有する現物株を売却すると含み益が確定するため、現物株の所属国に譲渡所得税を支払う必要もあり、それが無駄なコストになります。
このように、ファンドが保有する現物株の売買の回数が多ければ多いほど、信託事務の処理に要する費用と有価証券取引税もまた多くなることになります。

ファンドが保有する現物株の売買の回数の多さを示す指標として「売買高比率」というものがあります。

※売買高比率
https://www.asahi.com/business/fund/toshin/TKY200706230185.html
ポートフォリオ売買回転率とは、ファンドがどのくらい頻繁にポートフォリオ組み入れ株式を売買しているかを表す指標だ。日本では、この指標は「売買高比率」という名称で運用報告書に記載されることになっているが、その定義は計算期間中の株式売買金額(売りと買いの合計)を期中の平均組み入れ株式時価総額で除したものだ。この比率が高ければ高いほどファンドは組み入れ株式の売り買いが多いことを意味する。
一般に売買回転率の低いファンドは、組み入れた株式を長期に保有しているファンド、換言すれば「バイ・アンド・ホールド」方針のファンドとみることができる。一方、売買回転率の高いファンドは組み入れ株式の売買を頻繁に行う「トレーディング」タイプのファンドといえる。そうした積極運用のファンドは、基準価額の変動率つまりリスクも比較的高くなるものと思われる。
ファンドを評価する上で売買回転率を見ることが重要な理由の一つは、回転率の大小が運用コストの多寡を推察する手がかりになるからだ。組み入れ株式を売買する時には売買委託手数料がかかる。頻繁に売買を繰り返せばそれだけ売買委託手数料がかさむことになる。そればかりではない。規模の大きいファンドが大量の組み入れ株式を売却しようとすれば売値を安くしないと売れないし、買い付けの場合は買値を高くしないと十分な量の株式を集められない。いわゆる「マーケットインパクト」という表面にはあらわれないコストが発生する。こうしたトレーディングコストはパフォーマンスの足を引っ張る要因となる。




売買高比率が高いと、有価証券取引税と信託事務の処理に関する諸費用も高くなります。
実際の数値で確認してみましょう。

「有価証券取引税」の推移は、次のとおりです。

第2期運用報告書 0.004%(売買高比率0.21)
第3期運用報告書 0.004%(売買高比率0.12)
第4期運用報告書 0.010%(売買高比率0.41)
第5期運用報告書 0.010%(売買高比率0.42)
第6期運用報告書 0.020%(売買高比率0.89) 
第7期運用報告書 0.018%(売買高比率0.97
第8期運用報告書 0.012%(売買高比率0.45)
第9期運用報告書 0.009%(売買高比率0.39)


「信託事務の処理に関する諸費用等」の推移は、次のとおりです。

第2期運用報告書 0.031%(売買高比率0.21)
第3期運用報告書 0.025%(売買高比率0.12)
第4期運用報告書 0.032%(売買高比率0.41)
第5期運用報告書 0.026%(売買高比率0.42)
第6期運用報告書 0.043%(売買高比率0.89
第7期運用報告書 0.017%(売買高比率0.97
第8期運用報告書 0.003%(売買高比率0.45)
第9期運用報告書 0.003%(売買高比率0.39)


第6期と第7期の売買高比率が突出して高いことが分かります。
なお、この売買高比率は、たわら先進国株の売買高比率ではなく、マザーファンドの売買高比率をたわら先進国株の計算期間に対応させたものになるため、あくまでも傾向を確認する程度でしかありません(たわら先進国株の固有の売買高比率は公表されていません)。


たわら先進国株の運用会社に以前確認したところ、


1,マザーファンドの売買高比率が増えれば、マザーファンドが支払う有価証券取引税と信託事務の処理に要する費用も増える。

2,マザーファンドは、支払った有価証券取引税と信託事務の処理に要する費用について、各ベビーファンドに対する割当額を決め、各ベビーファンドに請求する。

3,この割当額は、各ベビーファンドの純資産額に応じて按分するのではなく、各ベビーファンドの実際の売買の実態に応じたものになる。


ということでした。

実際に第6期と第7期を見てみると、第7期のほうが第6期よりマザーファンドの売買高比率が高いのに、たわら先進国株の有価証券取引税と信託事務の処理に要する費用等は第7期のほうが第6期より安いことが分かります。
この意味は、マザーファンドでは第6期よりも第7期のほうが頻繁な売買がなされたが、その原因は他のベビーファンドが頻繁な売買をしたせいだったので、たわら先進国株ではなく頻繁な売買をした他のベビーファンドが費用負担したということになります。


たわら先進国株の運用報告書からマザーファンドの運用コストを抜き出してみます。

第1期 0.038%
第2期 0.030%
第3期 0.033%
第4期 0.033%
第5期 0.040%
第6期 0.040%
第7期 0.071%
第8期 0.038%
第9期 0.041%


このように、第7期(マザーファンド第20期)の運用コストが突出して高い(第6期=マザーファンド19期の1.775倍)ことが分かります。


マザーファンドのコストの内訳を見てみます。
たわら先進国株の第7期運用報告書12頁以下に記載されている

外国株式パッシブ・ファンド・マザーファンド運用報告書 第20期(決算日 2022年2月15日)
(計算期間 2021年2月16日~2022年2月15日)

の1万口あたりの費用明細は、次のとおりです。

(a)売買委託手数料 0.006%
(b)有価証券取引税 0.025%
(c)その他費用 0.040%
合計0.071%


これだけでは分からないので、たわら先進国株の第6期運用報告書11頁以下に記載されているマザーファンドの第19期運用報告の数値を抜き出してみます。

(a)売買委託手数料 0.004%
(b)有価証券取引税 0.013%
(c)その他費用 0.024%
合計0.040%


両者を比較すると、

有価証券取引税が1.92倍
その他費用が1.67倍

に激増していることが分かります。

前述したとおり、これらが高くなったのは売買高比率が原因であると思われるので、マザーファンドの第19期と第20期の売買高比率を見てみます。
マザーファンドの第19期の売買高比率は0.46であるのに対し、第20期の売買高比率は1.30です。
この数字を見ると、マザーファンドは第20期に頻繁な売買をしていたことが分かります。

たわら先進国株の運用会社に以前確認したところ、第20期の売買は第19期の2.906倍(第19期が2000億円だったところ、第20期は6000億円)に激増したということでした。
マザーファンドの純資産額は、

第17期 3496億8900万円
第18期 3704億2000億円
第19期 4775億6500億円(第18期の+1071億円)
第20期 6426億4200億円(第19期の+1650億円)

というように猛烈な勢いで増えており、この過程で多くの売買がなされたものと思われます。


マザーファンドの第22期(2023年2月16日~2024年2月15日)の売買高比率は、本日公表されたたわら先進国株の第9期運用報告書に記載されています。
マザーファンド第22期(今期)の売買高比率は0.63であり、第19期の0.46や第21期(前期)の0.55と比べると高いのですが、第20期の1.30と比べればはるかに低いことが分かります。


マザーファンドの運用コストも、第19期が0.040%、第20期が0.071%、第21期が0.038%、第22期が0.041%ですので、頻繁な売買が行われていた第20期は高いコストが発生したものの、混乱は1年で収まり、第21期(2022年2月16日~2023年2月15日)には元通りの水準に戻ったと言えます。


このように、たわら先進国株は、第6期運用期間でコストが上振れして心配されたものの、翌年の第7期でうまくいなして、第8期(前期)には元通りの水準に戻り、第9期(今期)は新規設定以来で最安となりました。

というわけで、運用報告書を見る限りでは何も問題点はありませんでした。
ただ、上記3ファンドのうちリターンがもっとも悪いのが気になります。

●たわら先進国株
3か月 14.98%
6か月 7.49%
1年 36.48%

●スリム先進国株
3か月 14.99%
6か月 7.53%
1年 36.56%

●ニッセイ外国株
3か月 14.96%
6か月 7.52%
1年 36.51%


たわら先進国株のリターンが悪い理由は、おそらく多額の流入資金のせいです。
上記3ファンドの「月次資金流出入額」(2024.1~10)は、次のとおりです。

●たわら先進国株
1月 99億2200万円
2月 105億7900万円
3月 107億3000万円
4月 123億0300万円
5月 196億1000万円
6月 158億0900万円
7月 158億0600万円
8月 117億0800万円
9月 127億3100万円
10月 114億6400万円

●スリム先進国株
1月 75億8300万円
2月 86億9100万円
3月 69億1000万円
4月 87億6800万円
5月 103億6600万円
6月 98億7500万円
7月 105億4600万円
8月 67億4700万円
9月 79億5500万円
10月 56億1800万円

●ニッセイ外国株
1月 -3億6900万円(資金流出)
2月 24億3700万円
3月 13億4200万円
4月 29億1800万円
5月 36億6200万円
6月 41億1100万円
7月 37億3400万円
8月 18億1200万円
9月 2億3600万円
10月 5億4800万円


たわら先進国株に資金流入が集中し、スリム先進国株は5~6割程度、ニッセイ外国株に至っては数%程度に激減していることが分かります。
とはいえ、資金流入額の多寡はファンドの人気のバロメーターであり、いずれは積み上がった純資産額によって解決されますので(同じ大きさの石を風呂桶に投げ込む場合とプールに投げ込む場合とを想像してください)、しばらくは辛抱するしかありません。

2 件のコメント:

  1. 詳細な解説 ありがとうございます  安心して保有していけます
     ニッセイとの差 少しばかり残念に思ってました 
     税制の修正が進みそうです 投資の手段が個別株から高配当ファンドへ流れている事との関連が気になります どのように解釈されますか  

    返信削除
  2. コメントありがとうございます。

    >税制の修正が進みそうです 投資の手段が個別株から高配当ファンドへ流れている事との関連が気になります

    まだスリムS&P500とスリムオルカンの二強だと思っています。
    税制がどうなるかは全く分かりませんが、20.315%が引き上げられたら私も米国ETFを処分する踏ん切りがつくかもしれません。

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