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2023年4月12日水曜日

【重要な追記あり】Tracersオールカントリー、指数のライセンス料っていくらなの?

インデックスファンドは、特定の指数(「index」)をベンチマークとし、それに連動する運用を目指すファンドです。


この指数は、指数提供会社が作成しています。

インデックスファンドの運用会社は、指数提供会社との間でライセンス契約を締結し、ライセンス料を支払う代わりに指数を利用することの許諾を得ます。


このライセンス料は運用会社が負担するのが一般的です。運用会社の賃料や人件費等と同様に、運用会社の売上げ(投資信託の運用会社報酬等)から支払われます。

しかし、トレーサーズオールカントリーのように、指数のライセンス料をファンドに負担させる運用会社が現れました。

【参考】

●Tracersオールカントリー、0.05775%の安さの理由(「内部で試算しているが、開示するつもりはない」)

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/tracers005775.html



ファンドに負担させるということは顧客に負担させるということを意味します。そこで、指数のライセンス料は果たしていくらなのかが問題となります。

とはいえ、指数のライセンス料は、上述したとおり、運用会社と指数提供会社との間のライセンス契約に基づくものです。つまり、ライセンス料が具体的にいくらになるかは、運用会社と指数提供会社との間の個別の契約交渉次第であり、定価があるものではないことになります。


ここで参考になるのが「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の運用会社である三菱UFJ国際投信のコメントです。

SBI・V・S&P500が新規設定された際、スリム米国株は税別信託報酬の同率に対抗値下げをしたのですが、対抗値下げの実行まで1か月半ほどのタイムラグがありました。ブロガーミーティングで時間がかかった理由を聞かれた同社の代田常務取締役は、「対抗値下げの原資を作るために指数提供会社とライセンス料の値下げ交渉をする必要があったからだ」と述べたそうです。

【参考】

スリムシリーズが吐露したコスト競争の限界

http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1517.html


指数のライセンス料は、ライセンス契約の秘中の秘です。

三菱UFJ国際投信も具体的な数値は明らかにしていませんが、通常の商慣行からすれば大口顧客であれば優遇されるものと思われます。投資信託の大口顧客とはファンドの運用額が大きいことですので、三菱UFJ国際投信もスリム米国株の純資産額が増え続けていることを値下げ交渉の重要な材料にしたものと推察されます。


スリム米国株はS&P500指数をベンチマークにしていますが、同じ指数をベンチマークとする米国ETFにSPYがあります。

SPYは運用資産残高が3702億ドルの世界最大のETFです。運用会社はステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ社で、指数提供会社はスタンダード・アンド・プアーズ社です。


ステートストリート社がS&P社に支払っているS&P500指数のライセンス料は、SPYの目論見書に明記されています。

こちらです。


https://www.ssga.com/us/en/intermediary/etfs/resources/doc-viewer#spy&prospectus


指数のライセンス料は、この表の「S&P License Fee 0.0302%」の部分になります。

経費率0.0945%のうちの0.0302%ということは、SPYの経費率の3分の1が指数のライセンス料であるということになります。SPYの運用資産×0.0302%をS&P社が毎年もらい続けることができると考えると、指数のライセンス料は相当に大きいことが分かります。


さて、問題のトレーサーズオールカントリーがベンチマークとする指数は「MSCIオールカントリーワールドインデックス」です。

この指数は、かつてVT(バンガード社の全世界株ETF)がベンチマークにしていたものの、そのライセンス料の高さに耐えかねてFTSE社の指数に変更したといういわくつきのものです(それなのに各社が全世界株ファンドのベンチマークにMSCI社の指数を採用するのは、先進国株マザーファンドと新興国株マザーファンドの指数がMSCI社のものであり、それらのマザーファンドを買うだけファンドにして手間と費用を抑えたいと考えたからでしょう。雪だるま全世界株のように、FTSE社ではない指数提供会社の指数をベンチマークとする3種類の米国ETFを組み合わせているのに「FTSE社の指数をベンチマークにするインデックスファンドである」と宣言するのは、普通はとても躊躇します)。


米バンガード、一部ファンドの基準指標をMSCIから切り替えへ コスト削減狙い

https://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT820913620121002


このように、


1,世界最大のETFが支払っているライセンス料が0.0302%であること

2,VTがライセンス料の高さに耐えかねた経緯があること

3,トレーサーズオールカントリーの正式名称は「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」であり、ファンド名に「MSCI」が入っていること


を考えると、トレーサーズオールカントリーが負担しなければならない「MSCIオールカントリーワールドインデックス」のライセンス料が0.0302%を下回るとは思えません。


そうなると、


トレーサーズオールカントリー

0.05775%+0.0302%+α(書類作成費等)=0.08795%+α


たわら全世界株、スリムオールカントリー 0.1133%


となり、その差は0.02535%となります(最も低廉な指数のライセンス料を前提とした数値であることに注意)。

しかも、トレーサーズオールカントリーは、たわら全世界株やスリムオールカントリーがファンド負担にしていない11種類(指数のライセンス料を含めると12種類)の費用をファンド負担にしていますので、その差はさらに縮まることになります。

【参考】

●Tracersオールカントリー、0.05775%の安さの理由(「内部で試算しているが、開示するつもりはない」)

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/tracers005775.html



このように考えると、トレーサーズオールカントリーは、最初に思ったほど激安ではなさそうな感じがしてきました。

特に、指数のライセンス料を含む12種類の費用がいくらになるのかが全く予測がつきません。というのは、これら12種類の費用は、他社ファンドであれば運用会社の損金として処理されていることから、他社ファンドの運用報告書を見てもその記載がないからです。

そうすると、トレーサーズオールカントリーが自主的にこれら12種類の費用の試算額を事前開示しない限り、全世界株インデックスファンドを購入したいと考える投資家の多くが「1年間の運用実績を見てから買うかどうかを判断しよう」と考えて買い控えをする(端的に言えば、トレーサーズオールカントリーを買わずにスリムオールカントリーを買うようになるかもしれません。


このような事態は誰にとっても不幸な結果しか生みませんので、日興アセットマネジメントにおかれては「内部で事前に試算しているが、開示するつもりはない」などという姿勢を改め、試算額を速やかに開示してほしいものです。



【2023.4.14追記


指数のライセンス料について、0.0302%を下回ることはないと記載しましたが、ほぼゼロに等しいようです。

【参考】

Tracersオールカントリー、たわら全世界株・スリムオールカントリーよりも高コスト?

https://tawaradanshaku.blogspot.com/2023/04/tracers_14.html

2 件のコメント:

  1. 半年は様子見して、スリムオルカンとのリターン差を確認してから乗り換え検討、という人が多そうですね。
    たわらがすぐにでも追随値下げしてくれたら、スリムも続くので最高なんですが。

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  2. コメントありがとうございます。

    >半年は様子見して、スリムオルカンとのリターン差を確認してから乗り換え検討、という人が多そうですね。

    SBI・V・S&P500が成功したのは、当初募集期間を設定し、16億3800万円でスタートすることができたからです。

    新規設定直後にお金を集めることに失敗すると、トレーサーズオールカントリーの純資産額は増えず、後に続くファンドも現れず、野村スリーゼロのような感じで終わってしまいかねませんので、速やかに積極的な情報開示をして何とか挽回してほしいところです。

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