投資信託は「リスク資産」に分類されます。
そして、「リスク資産」の「リスク」とは「リターンの標準偏差」のことです。今回は「リターンの標準偏差とは何か」というお話です。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、リスクとリターンの関係について次のように説明しています。
運用の世界では一般的に、株式や債券など各資産のリスクを、リターンの「標準偏差」を使って表します。「標準偏差」とはリターンのブレの大きさを表す数値で、標準偏差が大きい(リスクが高い)ほど、リターンのブレ幅が大きいことを意味します。
株式など有価証券のリターンの分布は、統計学で用いられる正規分布の形状に似ています。正規分布は左右対称の釣鐘型の形をしています。各資産のリターンが正規分布に従うなら、リターンは約3分の2の確率で中心から±1標準偏差に収まり、95%の確率で±2標準偏差に収まることが想定されます。
「日本株の期待リターンは5.6%、リスク(標準偏差)は約23%」という数値を使って具体的に見てみましょう。
リスクは通常、1標準偏差で表されます。「日本株の期待リターンは5.6%、リスク(標準偏差)は約23%」であれば、1年間のリターンは期待リターン5.6%を中心にして、上下23%の間で変動する確率が約3分の2(約68%)であることを意味します。言い換えれば、1年間のリターンがプラス5.6%からプラス28.6%の範囲に収まる確率が約3分の1、プラス5.6%からマイナス17.4%の範囲に収まる確率が約3分の1であると想定しています。逆に言うと、毎年のリターンがマイナス17.4%より大きく下がる確率は約16%、プラス28.6%より大きく上がる確率も約16%となります。
https://www.gpif.go.jp/gpif/diversification2.html
また、三菱UFJ銀行が分かりやすい図で説明しています。
たわら先進国株のデータに当てはめてみます。
期待リターンはJPモルガンの超長期市場予測2014年の年率5.0%、標準偏差は5年実績値の年率17.17%にしました。
【JPモルガンの超長期市場予測2024】
【標準偏差】
たわら先進国株の期待リターンは年率5.00%、標準偏差は17.17%。
①過去のいずれかの時期に投資した場合、1年間のリターンは、68.3%(約3分の2)の確率で-12.17%から+22.17%の範囲(±1標準偏差。期待リターン5.0%を起点として±17.17%)に収まる。すなわち、-12.17%から+5.0%の範囲に収まる確率は34.15%(約3分の1)であり、+5.0%から+22.17%の範囲に収まる確率も34.15%(約3分の1)である。ただし、31.7%(約3分の1)の確率で-12.17%から+22.17%の範囲を逸脱する。すなわち、-12.17%を下回る確率は15.85%(約6分の1)、+22.17%を上回る確率も15.85%(約6分の1)。
②過去のいずれかの時期に投資した場合、1年間のリターンは、95.4%の確率で-29.34%から39.34%の範囲(±2標準偏差。期待リターン5.0%を起点として±17.17%×2.0)に収まる。ただし、-29.34%を下回る確率は2.3%であり、+39.34%を上回る確率も2.3%である。
また、期待リターン5.0%ではなく5年実績値の19.85%、標準偏差17.17%で計算すると、次のとおり。
①過去のいずれかの時期に投資した場合、1年間のリターンは、68.3%(約3分の2)の確率で+2.68%から+37.02%の範囲(±1標準偏差。5年実績値リターン19.85%を起点として±17.17%)に収まる。すなわち、+2.68%から+19.85%の範囲に収まる確率は34.15%(約3分の1)であり、+19.85%から+37.02%の範囲に収まる確率も34.15%(約3分の1)である。ただし、31.7%(約3分の1)の確率で+2.68%から+19.85%の範囲を逸脱する。すなわち、+2.68%を下回る確率は15.85%(約6分の1)、+37.02%を上回る確率も15.85%(約6分の1)。
②過去のいずれかの時期に投資した場合、1年間のリターンは、95.4%の確率で-14.49%から54.19%の範囲(±2標準偏差。5年実績値リターン19.85%を起点として±17.17%×2.0)に収まる。ただし、-14.49%を下回る確率は2.3%であり、+54.19%を上回る確率も2.3%である。
たわら先進国株のリターンの実績値は、
1年 26.71%
3年 18.81%
5年 19.85%
設定来(2015年12月設定のため8年8か月)14.79%
です。
期待リターン5.0%を前提にすると、直近1年のリターン26.71%は、「-12.17%から+22.17%の範囲」を上方に逸脱したものの「-29.34%から39.34%の範囲」内であるため、想定し得る範囲内と言えます。また、3年リターン18.81%と5年リターン19.85%、設定来リターン14.79%は、いずれも「-12.17%から+22.17%の範囲」内であるため、通常想定し得る範囲内と言えます。
これに対し、5年実績値リターン19.85%を前提にすると、全てのリターンが「+2.68%から+37.02%の範囲」内であるため、通常想定し得る範囲内と言えます。
このように分析することで、相場が急騰・急落しても「まだ慌てる時間ではない」と落ち着くことができるでしょう。
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