日興アセットマネジメントは、2023年4月26日、「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」を信託報酬0.05775%で新規設定しました。
これは同種ファンドである「たわらノーロード全世界株式」(2023年4月7日に引き下げ)や「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(2023年5月11日に引き下げ予定)の信託報酬0.1133%の50.97%という驚愕の安さです。そのため、販売開始前から大きな話題となりました。
しかし、発表当初は信託報酬の安さに度肝を抜かれたものの、指数のライセンス料を顧客負担にしていることが分かったことで、発売前から大炎上してしまいました。
Tracers MSCIオールカントリーは他社ではファンド負担とされない費用の総額を事前に内部で試算していますが、その開示は拒んでいます。
そこで、私が推測したところ、概ね0.062~0.08%程度(ただし、0.1%が上限)ではないかと思われ、
という疑いが発生しました。
また、Tracers MSCIオールカントリーはなぜか「最安を目指す」と明言しないことから、上記の疑いがますます強まりました。
様々な話題を振りまき、インデックスファンドのコストに関する理解増進に身を削って貢献したTracers MSCIオールカントリーの新規設定日は2023年4月26日ですから、1か月が経過したことになります。
そこで、1か月の実績を見てみます。
※よろしければ、次の記事もご覧ください。
純資産額は4億4800万円(2023年5月31日付)。
新規設定直後はもっとも関心が集まる時期ですので、この時期に純資産額を得ることに失敗するとファンドの先行きは暗いものとなります。
投資信託にとって純資産額というのは顧客の愛です。投資信託は愛されて、大きな金額の純資産額を集めることができます。たくさんの愛をありがとう。(ⓒ大島優子)
Tracers MSCIオールカントリーは顧客の愛を得ることができなかったようです。
つぎに、1週間リターンと1か月リターンを見てみます(SBI証券の「基準価額騰落率(期間別)」によりました)。
運用会社は毎日、基準価額からコストを差し引くため、基準価額の騰落率は「コスト控除後のリターン」を意味します。
1,1週間リターン
Tracers MSCIオールカントリー 1.04%
スリムオールカントリー 1.04%
たわら全世界株 1.03%
SSGA全世界株 1.03%
2,1か月リターン
Tracers MSCIオールカントリー 4.64%
スリムオールカントリー 4.61%
たわら全世界株 4.60%
SSGA全世界株 4.58%
他社の同種ファンドと比較すると、1週間リターンは問題ありません。
しかし、スリムオールカントリーより0.03%、たわら全世界株より0.04%、SSGA全世界株より0.06%上振れています。
Tracers MSCIオールカントリーとの信託報酬差は、スリムオールカントリー・たわら全世界株が年0.05555%(うち1か月分は0.0046%)、SSGA全世界株が0.47025%(うち1か月分は0.0392%)ですので、同種ファンドを比較すると直近1か月で0.02~0.03%の上振れエラーが出たようです。
とはいえ、新規設定直後はどのファンドも運用が安定せず、上振れや下振れが発生しがちですので、直近1週間リターンが安定していることも考慮すれば、直近1か月の上記エラーは特に問題視すべきではないと考えます。
このように、Tracers MSCIオールカントリーの直近1か月の運用は、新規設定直後ということを考えると許容範囲内と言えます。
しかし、致命的にダメなのは、冒頭でお伝えしたとおり、
①「コスト(信託報酬)水準には徹底的にこだわった」と大々的に宣伝しながら、他社ではファンド負担とされない費用の総額を明らかにしない
②「コスト(信託報酬)水準には徹底的にこだわった」と大々的に宣伝しながら、コスト最安を約束しない
という2点について、日興アセットマネジメントがこれらが致命的にダメな点であることを理解していないということです。
アエラ2023年6月5日号で、下記記事が掲載されています(アエラドットで全文が見れます)。
日興アセットマネジメントは、アエラの取材に応じ、次のようにコメントしていますが、このようなコメントを繰り返す限り取材に応じれば応じるほど顧客が逃げることに気づくべきです。
日興アセットマネジメントは、Tracers MSCIオールカントリーを新規設定するにあたり、事前に内部でコストの試算をしています。
【参考】
●Tracersオールカントリー、0.05775%の安さの理由(「内部で試算しているが、開示するつもりはない」)
同社の商品開発部長の上記コメントが上記の試算結果を見た上でのものであることを考えると、「最安を約束できないのは、既に最安ではないからではないか」という疑惑がますます深まったと言えるでしょう。
私は純資産総額を積み上げれば最安になりうるし、オルカンも競ってくる環境を作れると思ったのでさっさとトレカンに乗り換えてしまいましたが、普通に考えれば最安が確認出来てから投資するか考えればいい訳で、そりゃこうなりますよね。
返信削除インデックスファンドが指数のライセンスフィーを誤魔化すなんて詐欺みたいなものでしょう。それを隠して信託報酬の安さだけを強調するなんて騙す気満々じゃーないですか。
返信削除そんな顧客をバカにした態度の方たちとは距離を置きたいですね。Tracersシリーズはもちろん、日興AMのファンドを自分が買うことは絶対にないでしょう。
コメントありがとうございます。
返信削除>普通に考えれば最安が確認出来てから投資するか考えればいい
最安を約束すればいいのに、それをしない点でなんか怪しいんですよね。
>指数のライセンスフィーを隠して信託報酬の安さだけを強調するなんて騙す気満々じゃーないですか。
目論見書をよく見ると、小さな字で書いてはあります。
ただ、競合ファンドと違う物差しで勝負するならば、そのことが誰にでも明確に分かるように、大きな字で販促資料に記載すべきだったと思います
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